サービス内容を比較すると、大宮市と東松山市では、週4回以上の配送で「安定的に適切な栄養摂取を図り、健康を維持する」といった厚生省基準に沿った位置付けの国庫補助事業である。他方、小鹿野町は町単独事業の配食サービスと社協の単独事業の会食サービスの相互補完で、ほぼ月1回のサービスを実施している。これは、民生委員が町内の寿司屋から購入した弁当を会議の際に持ち帰り、近隣の高齢者宅に配達するもので、「行政の最小限の義務として月1回の安否確認の実施」が主目的である。この違いは、国庫補助の有無と目的の捉え方によってサービス内容が異なるものと思われる。
いずれの地区も利用者が手を加えずにそのまま食することができる当日の調理食が宅配されるシステムで、大宮市は夕食、東松山市は昼食主体で、利用希望があった場合のみ夕食対応、小鹿野町は昼食の宅配である。
供給システムをみると、いずれの地区も社協がサービス供給に関わっており、特に大宮市と東松山市はともに社協委託事業で、社協がサービスのコディネータとなり、地域の福祉施設や民間企業等が調理機能を担当、コンビニ等を配送拠点として活用して、拠点から利用者宅までの宅配をボランティアが担当する、というシステムを採用している。
上記のようなシステムで実施されるモデル地区の配食(会食を含む)サービスの問題点・課題として、担当者から図表3-3のような回答があった。なお、各自治体の住民調査の自由回答に寄せられた要望事項を、住民ニーズとの対応上の問題点として取り上げた。
現行のサービス供給について、配食回数の少ない小鹿野町では、回数を増やすための方策として、大宮市や東松山市同様に特別養護老人ホームの調理施設の活用が検討されているが、利用者の居宅への宅配方法が大きな検討課題となっているという。
大宮市と東松山市の宅配は、住民の福祉に対する意識の醸成を目的として有償のボランティアを活用しているが、コストがやや割高であること、地域によってボランティア意識に差がある、ボランティアが集まりにくいなど、ボランティアを恒常的に確保することの困難さが指摘されている。
東松山市では、夕食対応を利用希望があった場合に限定せざるを得ない背景に、夕食配送時間にボランティア(この時間帯に忙しい主婦層)が集まりにくいといった要因が指摘される。大宮市では配送時間を午後4時から5時半までと夕食より少し早めに設定するなどの工夫により夕食配送を実施している。しかし、ボランティアが集まらない地域では配送できず、ボランティアに急な不都合が生じた場合は社協職員が対応しているのが実情であり、現在、ボランティア不足をシルバー人材センターへの依頼で補うなど、「仕事」として位置づける必要性を感じているようである。
調理機能は、調理施設を持ち、高齢者を対象とした調理を実施する特別養護老人ホームなどの活用が特徴であろう。大宮市の献立は主食2種類(普通食・おかゆ食)とおかず(普通食・キザミ食)といった選択肢を設けてサービスを工夫しているが、糖尿病等栄養管理を要する利用申込に対応できなかったとの回答がある。高齢者の増加に伴ない多様化・個別化するニーズヘの対応は今後の検討課題の一つであろう。
いずれの地区も利用者がそのままで(手を加えず)食すことができる調理品の宅配であるが、配送拠点での異物等混入や利用者の食べ分けなど衛生管理面に懸念が残されているとともに、衛生管理面の配慮から利用者の不在時は持ち帰るシステム(東松山市)をとった場合、配食サービスが受けられないことが苦情につながるケースもでている。