それゆえ、資源が不十分であるならば、創り出すあるいは創り出すために働きかけて獲得することも等しく重要である。三つ目として、目的と必要に応じて取捨選択し組み合わせることではじめて役に立つ、という特性がある。ある資源をそれ自体では役に立たないとせず、他の資源と併用することで効果を上げる、という発想も必要である。そして、四つ目として、以上のことから察しがつくとおり、一言で資源といっても、そこで意味する内容は多種多様で、その範囲はきわめて広い、ということがあげられる。
通常、社会資源と言えば、「社会で生活する人々や集団が、さまざまな問題を解決したり、よりよい生活を送るのに役立てられるすべて」のことを指している。実際には、地域社会に存在する、自然、文化・歴史、住民、家族、住民組織、NPO・NGO、コミュニティ、企業、病院等々とそれらから派生する情報といった、住民生活や社会の生産活動を支える有形無形のものである。平易にいえば、ひと、カネ、もの、情報、制度など、生活になくてはならないもの、ということができる。このような社会資源のうち、地域社会において住民の保健・医療・福祉分野で活用可能な諸手段を、ここでは「健康福祉資源」と呼ぶ。
そこで、このような「資源」の特性を踏まえて、次の方向性のもとで健康福祉資源化を図っていく。すなわち、健康福祉資源の創造、開発、発掘という、いわば健康福祉資源化の可能性を模索する過程の中で、資源をフルに活用し工夫した結果が、個性ある地域福祉文化の土壌を形成することになる、と考えるべきであろう。そのためには、高齢者や周囲の人々の、こういう資源が必要だ、不足している、と言う声を取り入れて健康福祉資源化を図り、地域本位・住民本位の観点に立ち、自治体政策の枠の中で総合サービスとして組み入れていくことが重要である。
2 モデル地区の選定とその理由
(1) モデル地区選定の考え方
社会資源の健康福祉資源化を検討するにあたり、地域の中で住民ニーズ、社会資源の総量や分布状況、地理的条件等は大きな規定要因となる。例えば、都市的な地域と山間的な地域とでは、住民の意識に違いがあろうし、社会基盤の整備状況、健康福祉資源のもとになる社会資源の分布等についても違いがあることが予想される。
本県には92市町村があり、都市的な地域もあれば、田園風景を残す地域、山間地域もある。本県の地域特性を大まかに分類すると、人口や社会資源の密集した都市地域、市街地と緑地空間が適度に混在している田園地域、近隣の人間関係が濃密に残った緑豊かな山間地域に分けることができる。
しかしながら、本調査研究におけるモデル地区は、多様なサービス供給構造と当該団体における資源の代替可能性をそれぞれ把握するために設定している。したがって、一応、上述の地域特性に基づき、調査対象となるモデル地区を設定し、そこに住む住民のニーズ、社会資源の分布状況を含めたその地区の環境条件を整理した上で、福祉サービスの現状や健康福祉資源化にあたっての問題点を検討することとした。また、そこから得られる方策の視点を全県的に汎用性のあるものにしていく考え方をとり、健康福祉資源化にあたっての実効性をある一定以上担保することを模索した。