ア 措置制度によるサービスの供給構造
措置制度のもとでは、基本的な構図として、介護サービス希望者は、まず居住する市町村の担当窓口にその旨を申請し、これを受けて行政は介護を要するという心身の状態とともに、所得や家族構成などの要件を審査する。そして、申請者の中から要件審査を満たした者だけに資格が与えられる(選別主義)。これらの要件を通過すると、サービスの給付が決定するが、この行政による決定、すなわち行政処分は一般に「措置」と呼ばれ、現行の高齢者介護サービスは、この措置制度に基づいて運営されている。
行政による措置が決定したサービスは、むろん行政が直接提供することもあれば、いわゆる公設民営といった間接的な形でも提供されるが、実質的には高齢者福祉の領域ではその大半が、社会福祉法人など行政外の組織によって担われている。このように見れば、サービスの供給主体は多様なように思える。しかし、この社会福祉法人も公共性の強い存在であり、行政からの委託という実施形態を考えれば、高齢者福祉サービスの供給は、広義の公的セクターにほぼ一元化されていると言えるだろう。