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(2) 措置制度から契約制度への転換

 

二つ目の潮流としては、措置制度から契約制度への転換があげられる。介護保険法の成立に伴い、新年度から高齢者介護サービスの給付の仕組みにおいて現行の措置制度が廃止され、契約制度が導入される。しかも、この措置から契約への流れは、現在取り組まれている厚生省の社会福祉基礎構造改革でも継承され、契約によるサービス給付への切り替えが進行している。措置から契約に転換することで、健康福祉分野のみならず、自治体経営そのものまでに変革を余儀なくさせるものといえるだろう。具体的には、サービス供給のあり方等が、次の図表のように変わるものと考えられる。

図表1-1 措置制度と契約制度によるサービス供給構造の主な特徴

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ア 措置制度によるサービスの供給構造

措置制度のもとでは、基本的な構図として、介護サービス希望者は、まず居住する市町村の担当窓口にその旨を申請し、これを受けて行政は介護を要するという心身の状態とともに、所得や家族構成などの要件を審査する。そして、申請者の中から要件審査を満たした者だけに資格が与えられる(選別主義)。これらの要件を通過すると、サービスの給付が決定するが、この行政による決定、すなわち行政処分は一般に「措置」と呼ばれ、現行の高齢者介護サービスは、この措置制度に基づいて運営されている。

行政による措置が決定したサービスは、むろん行政が直接提供することもあれば、いわゆる公設民営といった間接的な形でも提供されるが、実質的には高齢者福祉の領域ではその大半が、社会福祉法人など行政外の組織によって担われている。このように見れば、サービスの供給主体は多様なように思える。しかし、この社会福祉法人も公共性の強い存在であり、行政からの委託という実施形態を考えれば、高齢者福祉サービスの供給は、広義の公的セクターにほぼ一元化されていると言えるだろう。

 

 

 

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