1980年代のイギリスでは、地域産業の衰退、財政の悪化、景気の後退と失業率の上昇などが同時に進行し、大幅な増税にもかかわらず事態は改善されなかった。
今後の近い将来の我が国と非常に類似した状況にあった。
・鉄鋼、機械、化学、石炭、港湾などの重厚長大型産業の衰退→ 産業構造の転換
(失業者が急増して社会問題(都市暴動など)が起きた)
・手厚い福祉政策(ゆりかごから墓場まで)の行き詰まり→ 財政の逼迫
(住居費、医療費、教育費などは無料で、失業保険も手厚かった)
1979年の政権交代(労働党→保守党)を契機に、政府支出を大幅に削減して、(小さな政府)従来の公共サービス・公共事業を民間主導に転換した。従来の公共主導では「効率が悪い」という認識に立つものである。
新しい政策は、「規制緩和」「競争原理」「民間活力」がキーワード。金融ビッグバン、エンタープライズ・ゾーンの指定(特別経済区と同様)、PFI(Private Finance Initiative)、国営企業の民営化、一部の地方政府(県)の解体・解散などがある。中央政府が支出する補助金は、地方政府単独よりも、地方政府と市民・企業とのパートナーシップの事業体に優先して支払われる(民間的経営の重視)。特に、地方での環境関連予算が大きく削減され、地域の市民や企業が自ら環境改善活動に乗り出さざるを得なくなった。
イギリスには、歴史的に、ザ・ナショナル・トラスト、シビック・トラストなど、非営利の民間事業会社が多く(イングランドだけで約18万団体)、こうした「チャリティ団体(環境保護や教育、福祉など公共の利益に資する非営利団体)」に対する寄付は、企業や個人の納税額から控除される。
新労働党のブレア政権の下では、さらにその役割を拡大しつつある。
イ グラウンドワークの目的と特徴
・目的:パートナーシップによる身近な環境改善活動を通じて、地域の持続可能な経済・社会の再生に貢献すること。
・特徴:環境改善のための具体的な「行動」を起こすこと。
従来:行政に対して行動を促すデモンストレーションを行う(環境保護運動)。
今日:行政とともに環境保全活動に参加して行動する。
・対象:地域の全ての個人、グループ/住民、企業、地域団体、学校、PTAなど。
・予算:従来より少ない予算で地域住民の望むような環境整備を行う。
ウ グラウンドワークの根幹
1)環境改善に資すること(広い意味で)。
2)コミュニティの課題に応え、コミュニティを支える。
3)すべての参加者がボトムアップで所有意識を持つ。
4)すべての参加者がチームワークで進める。
5)プロジェクトの透明性、効率性を確保する。