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5 地域からの環境問題への取組

〜住民、企業、NPO、自治体等のパートナーシップの観点から〜

 

調査研究委員会 委員

根本 敏行

 

(1)「陳情型」から「行動型」へ

地球温暖化対策に限らず、我が国のこれまでの一般的な環境問題への地域での対応は、もっぱら「市民から行政に対して行動を促す陳情型」ないしは「行政に対して行動を促すデモ(ンストレーション)」という形をとることが多かった。

しかし、近年は、主に次の2つの理由から、市民(企業を含む)自らが具体的行動に参画する動きが目立つようになってきた。

○住民参加:環境問題など、地域の多様な行政課題に対して、その計画策定段階から行政プロセスに参加し、直接的な意見交換を望む傾向が強くなってきた。

○行財政改革:景気動向の低迷や、度重なる公的資金の出動から、公共側の事業予算そのものが潤沢ではなくなり、住民の要求をすべて受けて事業化することが困難になってきた。

環境問題への対応は「Think Globally Act Locally」の標語にも見られるように、地域におけるローカルな活動の積み重ねが重要である。その主要な担い手となるのは地域住民と地域を構成する企業などの様々なセクターである。

また、環境対策に限らず、公的事業を地域に展開する場合、初期投資よりもむしろ事後の維持・継続に問題があることが多い。例えば、公園の整備の後の維持管理などである。緑地等の維持管理を怠ると、緑の持つ自然の機能が十分に発揮されず、地域の水や二酸化炭素の循環、あるいは水蒸気の蒸散による都市気候緩和効果などの環境負荷削減の機能にも支障がでてくる。

公園に例をとるまでもなく、地域での環境政策の展開にとって、その計画段階からの地域コミュニティの参画は、事後の政策の維持・発展にとっても極めて有意義なことである。自分たちが主体的に計画、実施に係わった公的施策に対しては、誰からの強制もなく、住民自らがその維持・発展に喜々として参加するインセンティブが沸いてくるものである。

その典型的な姿の1つが後述するグラウンドワークである。

 

(2)アンケート結果(その1)

今回の「地球温暖化防止に向けての地方公共団体の取組に関するアンケート結果」(以下単に「アンケート結果」とする)では、II-7.地球温暖化防止の政策や事業についての住民意思の反映の機会を設けたか、という設問に対して、実に86%が「ない」と回答しており、ほとんど実績がないことがわかる。

この分野においては今後、地方公共団体の大幅な意識改革と、関係者全員の参加による強力な推進活動が必要になると考えられる。

 

 

 

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