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かくして本論では、公的介護保険制度に関連した自治体の高齢者ケア・サービスを題材として、各自治体が「老人保健福祉計画」の中で策定した介護サービスの目標値を、各地域の社会的・経済的要因によってどの程度統計的に説明が可能であるかを分析してみることにする。各自治体は、老人保健福祉計画の中の個々のサービス目標値を、基本的には厚生省の推計マニュアルに従って算定しており、その意味では目標値は制度的に決められている側面をもつ。しかしその一方で、各自治体は、個々のアンケート調査に基づいて要介護者数の将来予測を行い、最終的なサービス目標値を個々の地域の実状に合わせて独自の判断で修正を加えることも認められている。本論の分析が意図することは、そうした各自治体の介護サービスの目標水準の間に何らかの統計的な傾向を見出すことである。あるいは制度的な要因によって決まっている部分と地域的な要因によって決まっている部分を統計的に識別することである。

地方分権時代を迎えて、今後は高齢者ケア・サービスの内容や水準について地方自治体が相互に競い合いことが、当然とみなされるようになってくるだろう。また地方分権と同時に行政がアカウンタビリティ(説明責任)に裏付けされた政策を実行していくために、医療や福祉の領域でも例外なく政策の効率性・有効性を評価することが必要になってくるだろう。本論の実証分析は、入手可能なデータの制約もあり、1つの試験的な試みにすぎないが、今後そうした政策評価を行っていく上での分析手法の1つとしてヒントを与えうるのではないか。

 

2 高齢者ケア政策と介護サービス

 

(1) 高齢者ケア政策の目標と手段

高齢者への介護サービスに関連する一連の施策を、ここでは「高齢者ケア政策」と呼ぶことにしよう。この政策の最終目標は何であろうか。公的介護保険制度の導入をめぐって、この間、政府や厚生省が出してきた報告書等を読んでいくと、一連の高齢者ケア政策の目標は「高齢者の自立」を支援することにあると読み取ることができる。すなわち、各種の介護サービスを提供することは、もちろん要介護者(施設入居者や寝たきり状態の老人)を増やすことではなく、最終的には要介護者を減らして1人でも多くの老人が自立した生活を送れるようにすることであると理解できる(2)

このことを、公共財の理論で使われるC-アウトプット(consequent output)とD-アウトプット(direct output)の概念を用いて考えてみよう。

 

 

 

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