(2) A市の事例
ここで、既に政策評価に取り組んでいるA市の事例から、政策評価一般に敷衍できる問題点や課題を抽出し、政策評価の地方行政における位置づけを考察する。
ア 事例
市長選挙の際の公約である「民間コンサルティング会社による行財政の見直し」から、政策評価がスタートした。A市の活動に関して、政策・施策・事務事業の3段階の体系に位置づけ、およそ1,100の事務事業について個別の指標に基づく評価が行われる。この政策評価について、計画・予算・組織という地方公共団体の活動の骨格との関連は、以下のとおりである。
○計画との関連
評価は、基本経計画、実施計画における施策体系の見直しに用いられる。
○予算との関連
毎年夏頃に幹部レベルでの評価会議を行い、評価を参考にして、めぼしいものを予算編成に反映させる。
○組織との関連
組織編成・人事に関しては利用されていない。
イ 課題
(ア) 住民に対して公開されていないこと。
市町村の事務事業は住民に身近な課題が多く、公開して見られたら困るという考えが先行している。規模の大きい県レベルならば容易に導入できるのであろう。ただし、A市では、まず部分的に公開する方向で検討している状況である。
(イ) 住民に理解されにくい評価であること。
現時点では、公開しても指標が分かり難く、何をやっているのか住民に理解されない面がある。その地方公共団体が何をしているのか一覧性のある形で提供することが必要である。そのためには、指標の数も1,000を超えるのでなく100以下にしないと理解されない。大括りにした中間段階の指標形成が重要であり、これをクリアしなければ、公開しても住民に対するアカウンタビリティは確保できない。