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標準時間1.0tsの場合の排気濃度は最大値で20%程度であり、1.0ts時間程度の間、発煙が継続している。1.25tsの場合の排気濃度は最大値で10%程度である。

この場合は、機関の定常運転状態の排気濃度8%にほぼ近く回転速度上昇時の発煙に対する影響は少ない。0.75tsの場合は、0.75ts時間程度の間、排気濃度の最大値で50%程度の発煙が継続しており、1.0tsの場合より発煙が増大している。

機関回転速度は、上昇設定時間にほぼ比例して直線的に上昇している。0.75〜1.25ts程度の回転速度上昇時間の場合は、機関回転速度上昇に必要な燃焼は確保されているものと推測される。

以上から、排ガス発煙は、機関回転速度上昇時間に大きく影響をうけ、上昇時間を短くすると排ガス発煙は増大し、長くすると減少するという排ガス発煙と上昇時間とは、いわゆるトレードオフの関係にあることが分かった。

 

(2) 過給機アシスト装置の実証試験

機関回転速度を750→1,450min-1と上昇する設定時間を排ガス発煙が大きい0.75ts時間として、過給機アシスト装置の低負荷過渡時における排ガス発煙の軽減に対する有効性の実証試験を実施した。

過給機アシスト装置を作動しない場合と対比して作動した場合の排気濃度比較図を図9に示す。また、これらの場合の機関回転上昇図を図10に、過給機回転速度比較図を図11に、給気圧力比較図を図12に示す。

過給機アシスト装置を作動すると、作動しない場合に比べて排気濃度は、50%程度から10%程度に低減され、ほぼ、定常運転状態の排気濃度レベルとなった。

過給機アシスト装置を作動開始とほぼ同時に過給機の回転速度が増速され、機関給気圧力が増加しており、これにより燃焼が改善され排ガス発煙が軽減されたものと考える。

以上により、今回構築した過給機アシスト装置は、低負荷過渡時における排ガス発煙の軽減に対して有効であることが実証されたものと考える。

 

4. 調査研究の成果

 

(1) 過給機アシストシステムを構築した。

 

(2) 構築した過給機アシストシステムは、高過給高速船用ディーゼル機関の低負荷過渡時の排ガス発煙の軽減に対して有効であることを実証した。

 

5. 実用面での今後の検討項目

 

今回、構築した過給機アシストシステムは、ジェットアシストPTO付減速機、スクリューコンプレッサ及びジェットアシスト装置付過給機で構成されている。

本構成で実用化は可能と考えているが、さらに以下の項目の検討を行ない、過給機アシストシステムの実用化をめざす。

 

(1) スクリューコンプレッサ装置とジェットアシストPTO付減速機との注油システムを共用するなどのシステムのコンパクト化、コストダウンの検討。

 

(2) 過給機アシストシステム制御のガバナー制御装置との一体化の検討。

 

以上

 

 

 

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