船用電動長軸没液形カーゴポンプの信頼性向上のための調査研究
株式会社シンコー
1. 調査研究の目的
プロダクトタンカーは、各種石油精製品を搭載することから積荷の混合汚染を防止するため、カーゴポンプは各タンクに装備され長軸没液形又は油圧駆動サブマージド形が搭載される。タンク深さが14m以上になると、長軸没液形は軸が長く信頼性に問題があるため、海外メーカーの油圧駆動形が殆ど採用されて世界の95%以上の占有率があり圧倒的な強さを誇っている。しかし、油圧駆動式は運転騒音が極めて高く乗組員に対して、また港での騒音が問題となっている。
本電動長軸没液形カーゴポンプは騒音が低くかつ、運転効率が高い特長があり省エネ機器としても効果が期待できることから、本研究は長軸の信頼性向上を図り14m以上のカーゴポンプに対して使用可能にするため調査することが目的である。
2. 実施内容
2-1 実施項目
本調査研究は、実際に長軸没液形カーゴポンプ(試験設備の都合上長さは11m)を製作して故意に長軸を撓ませて振動・騒音を計測すると共に試験後ポンプを開放して、中間軸受等の損傷の有無を観察して実用の可否を調査研究したものである。
1]供試ポンプ本体及び駆動長軸設計要旨
供試ポンプの外形図及び組立断面図は図2及び図3の通りである。ポンプ回転数は、長軸の信頼性を考慮して1800rpmを選定した。インペラは円盤摩擦を下げて高効率とするため、3段形とした。長軸については、カーゴタンクの変形に対応して軸間に傾き角度が許容できるようスリーブ形歯車式撓み継手を装備した軸を2本使用し、これらの軸の重量を支持するためボールベアリングを軸サポート管内に設けた。その他はスリーブ形固定継手により長軸を接続した。軸サポート内には潤滑油を充満して歯車軸継手、ボールベアリング及びラインベアリングを潤滑している。長軸は潤滑油内にあるので腐食の心配がないため、強度が高く曲がりに強いCr-Mo鋼を使用した。
潤滑油とカーゴ液はお互いのContaminationを防止するため図1の通り、コファーダムを挟んで上下にメカニカルシールが設けられている。上部メカニカルシールは潤滑油の漏洩を防止し、下部メカニカルシールはカーゴ液の漏洩を防止している。万一、いずれかの液の漏洩が生じた場合、コファーダム内に流入するため、この漏洩液を圧縮空気により上方に押し上げて液種を判断することができる。また、潤滑油は上部に設けた油面計によっても漏洩を判断することができる。
ポンプを解放する場合は、潤滑油を圧縮空気により上部に押し出した後、上方に解放することができる。