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検査・試験の結果は合格、不合格のいずれに関わらず記録に残し、基準に適合していることが確認されるまで次工程へまわさない。

 

小規模造船所の実情は、専任の独立した検査担当は置けず、各工程の責任者が兼ねていて、所要の検査・試験も、船主や検査機関の監督の立会いに随伴する程度が多い。作業員も「品質つくりこみ」の意識が薄くて、工程内チェックがなされないまま「最終検査待ち」となる。この「監督任せ」の「成り行き」が、スケジュールを乱す原因の一つとなっているようである。

自主的な品質管理が『ペイする』のは、この機会損失を廃することにもある。

 

11. 検査、測定及び試験装置の管理

器具、装置の正確さを管理、較正、維持する手順を規定する。

 

この精度要求は、これまでルーズだった事項の一つであるが、小規模造船所では、特殊な艤装は専門メーカーに委託するので、現状あまり問題はない。巻尺の基準較正条件(原器指定、温度・張力)と、運用(間隔、担当)を規定するくらいだろう。だが、これからはレーザー・トランシットなど光学電子機器を利用する場面も出てくるので、留意しておきたい。

 

12. 検査・試験の状態

不適合品(不良品のこと。目的に沿った適合品質でない場合をいう)が紛れ込まないように、検査待ち、検査中、検査済みの各状態が、どの工程でも誰にも明確に判るように、区分する。

 

これも造船所では「知る人ぞ知る」で、なんらかの明示を見掛けたことがない。これまでの慣習を捨てるとすれば、置き場所区分は採用しがたいので、個別のモノに状態表示(例:色分けマグネット添付)することになろうか。

 

13. 不適合品の管理

もし不適合品が発生したら、まず置き場所を変え、その不適合に関する責任の所在及び処置の権限を明確にする。

そして手順書(なければ作成)に従って程度に見合う処置を行う。

 

こう書かれてみると大袈裟だが、手順書は別として、実質はこれまで普通に行われてきたことである。ただ、不適合の程度判断や処置は現場担当の裁量に任され、手直しで済めば暗黙裏に行い、ダメなら廃棄し代替えする。もし代替品がなく間に合わなければ、船主に申出て修理し、保証ドックで交換する条件などを付して特別採用の了解を得る。すべて責任と権限まで含め臨機応変であった。

その現状をルールに整理し、処置は指示書で行い、記録としておけ…が要求である。

 

 

 

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