契約明確化は先送りしていても、いずれ追い込まれるはず。やがては市場競争の激化に伴って系列が崩れ、曖昧な取引は時代が許さなくなるからである。
4. 設計管理
設計責任者を明らかにし、設計管理、検証の手順を文書化しておく。
*設計員の資格(公的な意味ではない、内部認定でよい)
*複数グループ(殼/船/機/電)間でのインターフェイス(取合い面、分担の境界)
*デザイン・レビュー(資材や現場の担当を含めた、あらゆる面からの検討・審査)
*設計にインプットする要求と設計からのアウトプットの妥当性(造船では、承認図など対外的には決まってきているが、一品図など対内的には異なる。小規模造船所なら、上項デザイン・レビューに併せての確認でよい)
*設計変更(協議・承認・発効、整理・確認・記録)
…などの明確化である。
図面書きは外注、短納期では「検図の暇はなく、そんな手順は決めても成り立たない」の声が聞こえてきそうである。
品質に限らず、あらゆるモノゴトは「設計にはじまり、設計におわる」。ひたすら「間に合わせる」だけの設計で、造船業は持続するであろうか。
5. 文書及びデータの管理
混乱を防ぐため、要求事項に関する文書・データを管理する手順を定めて文書化。
*文書・データの審査・承認は確実に、
*廃止と最新版は識別を明確に、
規定しておく。
ここで文書とは、造船作業のより所となる紙類と捉え、作業部署の日付印を押して整理保管すると解してよいが、それにしても事務的に手間のかかる話である。データとは、それが電子メディア(媒体)に置き換った状態を指す。
小規模造船所で、この要求に応ずるには、タクシーの料金計算・領収書発行やコンビニのPOS(販売点処理)で見掛けるように、すべて電子データ扱いにしないとムリではなかろうか。軍手で扱えるテンキー程度のモバイル端末とICカードやバーコードを活用するペーパーレス管理システムを実現したいものである。
PHS携帯によるLAN(地域通信ネットワーク)から始めるのも一案。
6. 購買
品質システムの確立は造船所内だけにとどまらない。下請契約者に協力を求め、発注には品質要求・検証(検収の意を含む品質適合判断)条件を明確にし、伝票などの購買文書に記入不足がないようにする。主要な下請業者別の品質監査の推移記録をつくり、実績があり信頼できる業者なら管理をゆるめてよい。