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6.2. 「新しいフリートサポートシステムの研究」(SR238);

 

この研究は平成9、10年両年度で実施されたもので、IMOの船舶安全運航と環境保護に関する会社責任(経営者責任)を国際条約のもとに明確に規定したISMコードに対処するために実施されたものである。

即ち、従来の自己完結型(船長責任)から、陸上組織も含めた組織管理型(会社責任)へと移行するもので、2002年から500T以上の全船舶に適用されることになる船舶管理の理念の大転換に対処するものである。

その目的は海陸一体の安全運航管理システム(SMS; Safety Management System)の確立と組織活動(会社、船、乗組員全体)による履行を)容易にするためのフリートサポートシステム(FSS; Fleet Support System)を確立しようとするものである。

研究の目標と内容は、

1)FSSの概念の策定;

SMS業務の機能の分析を実施し、FSSについての概念的整理を行う。

・乗船調査等による船舶管理の現状と問題点の整理把握。

・IMSコードにより認定されたSMSマニアル(コンテナ船対象)に盛り込まれている陸上管理機能、船内管理機能及び外部支援機能間の船舶管理上の役割分担の精査と分類。

・これ等を通じてSMS業務を構成する要素と運航上の問題点の整理。

・業務の分類結果に基づきFSSの概念構想図を作成。

2)安全運航管理機能要件の明確化と機器・システムの役割分担の整理;

・SMS研究で分類された各業務が安全運航面で具備すべき機能要件。

・FSS各要素システムの機能要件を検討するための標準的手法の策定。

・標準的手法に沿ってQC-PLAN(PDCA; Plan→Do→Check→Act)への適合性分析、機能分析等により、SMS主要業務における船陸間、各組織間、並びに人と機器・システム間の役割分担の明確化。

3)FSSの機能要件の策定;

通信情報技術の進歩並びに類似技術、システムの開発動向を視野に入れながら、FSSで利用される基幹的な機器・システムの機能要件の策定。

4)新しい設計思想の検討と新しい機器、システムの概念設計(開発目標);

・使い易い船とは何かの観点からの新しい設計思想の基本的要件の整理。

・新しい設計思想に基づいて、新しい機器・システムの概念の纏め。

図6.にFSSの概念図を示しておく。

海運と造船がその知見を結集し、将来の船舶安全運航管理にとって真に必要な機器・システムの機能要件とあるべき運航システムを研究し、海運には船舶の安全運航に有効なシステムを、造船には新しい機器・システムの目標を与え、それ等を通じて船舶の安全運航に寄与することを目的としている本取組はFSAの真のターゲットを目指しているものと言えよう。

 

本稿では新しい海上安全性に対する動きを極く概括的に述べるにとどめたが、何れも大規模なシステム指向である。FSA達成のツールとしてのPSAもシミュレーションに大変な時間が掛かる悩みがあり、経年変化による性能、信頼性の劣化の解明にも更に注力しなければならない。これ等を取り込んだモニタリングシステムも規模が大きい。最終的には、これ等を全て組込んだFSSがFSAのターゲットを達成するものとなろう。

 

 

 

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