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以上のシミュレーション結果は保つべき信頼度のレベルによって経年変化に対する評価基準が可なり異なることを示しているが、概括的には新造から10年位までは点検期間は3〜4年でよいが、船齢15年位からその期間を短縮し、20年を越えると、点検補修の期間を0.25〜1.5年に短縮しなければ新造時の信頼性を保持できないことを示している。

[余談;このBaysian解析は練習帆船海王丸代船新造決定前に行った。当時、日本丸の後、海王丸新替えの予算が仲々決定されなかった。理由は"未だ動いているではないか"であった。航海訓練所と相談し、このシミュレーションを実施し、動いてはいるが、安全性確保のため、0.5年に1度点検しなければ安心できない。それでは訓練に支障を来す。と答申した。この書類が船研に回され、船研構造部が、このシミュレーションは正しい。当所で検討しても同様の結果である。と回答して呉れた。これが新替え決定に弾みをつける結果になった。]

 

3.2. 現行船級協会規則の検査;

 

現在の船級協会の入級条件としては、2年毎の中間検査、4年毎の定期検査を設定しているが、船齢によって検査の間隔を変化させることは実施されていない。このことは古くから各国船級協会同一である。

図2で明らかなように、船齢の如何に係わらず点検補修期間を一定にした場合、次回の点検補修量が増えるだけで単なる経済上の問題と見做すことは誤りであり、経年変化を考慮した点検期間を過ぎた時点から次の点検までの間は確実に信頼性が低下することになる。

 

3.3. 身近な経年変化の反映例;

 

日常生活の中で、経年変化の考えを取り入れて安全性を確保しようとしている例に、車の"車検"を挙げることができる。昭和58年から若干修正されたが、乗用車は新車は3年有効、その後2年に1回の検査、10年を越えると毎年1回の検査を受けなければならない。

使用条件の厳しいトラックは毎年1回と規定されている。

この事は図2のシミュレーション結果とよく似た傾向であり、これが何の抵抗も無く受入れられているのに、船の世界ではなまじ?長い歴史を持っているだけに、習慣が邪魔していると反省することも大切であると考える。

 

4. 機関性能の経年変化;

 

船舶の推進性能の経年劣化のうち、抵抗増加については2.で述べたように或る程度定量的に認識されているが、推進力を与える機関の性能の経年変化については、系統的な研究実績は殆ど無かった。平成9、10年両年度で行われた「SR235、経年劣化に伴う機関性能ライフサイクルの研究」が第1歩と言えよう。但し信頼性については未だしの感じである。第?T部に示した通り、機関故障による海難は平成8年度15.1%,平成9年度15.9%(隻数率)、非救助率は夫々2.2%、0%、平成10.1.1.〜10.12.31の間では機関故障事故の99.5%がGT≦500Tの船舶で占められていることをかんがえると、機関性能の経年劣化は大型ディゼル船に着目されるのは当然といえようが、それでもSR238では図3のように指摘している。図4にはSR235の成果活用の期待を示したが、多くの設備やシステム化が期待出来ない500T以下の船舶に対する対策を別途考慮しなければならないのではなかろうか。

 

 

 

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