4.1. バーサ博物館の調査(文献3)):
これ等の調査を通じ、文献3)では引き揚げ以来博物館に来館する人々の「バーサは何故転覆したのか」に答えるための調査を行った。その結果、沈没時のバーサの状態;
・排水容積;1,210m3 ・KM;6.3m
・喫水;4.8m(B.L.上) ・展帆面積;601m2
・KG;6.16m ・帆の中心(K-SC);26.5m と推定された。
以上の推定値を使用して、復原性の検討を行い、図9、図10、の結果を得て、次の結論を出している。
1)通常GMは0.5m〜1.0m欲しいところであるが、バーサは0.14mしかなかった。この値はKG=6.16mから算定されたもので、当時の船は重心に対して特に敏感であった。
2)風速4m/sでは傾斜角10°になりGZ曲線から傾斜モーメントと復原モーメントがバランスする点で、これでは転覆する。
3)KG=6.10mならば港内で転覆することはなかった。
この結論は4m/sの風で転覆したことの説明にはなるが、KG=6.10mでは大丈夫である説明にはなっていない。4m/sの風速などは海上では無風に近いもので、風を利用して走る帆船では何の役にも立たないからである。文献3)の結論は少なくとも"港内では転覆しなかった"と受けとめるべきだろうが、港内でも4m/s以上の風速は日常である。