7. 部材数による船殻重量及び工費変動の検討例
船殻構造部材のスペースを小さくすれば各部材寸法は小さくなり、一般的には重量は軽くなるが、部材数が増えて工数増となり、逆にスペースを大きくすれば部材数は減り工数も減るが重量は増える傾向にある。従ってその何れかの処にオプティマムポイントがあるが、これを見い出すためには多大の労力を要する網の目計算が必要である。しかもオプティマムポイントは材料価格、労務費、生産能率、性能の評価基準等の計算メジャーの変動に伴って変化するから、画一的にポイントを求めるのは困難である。
ここでは、大まかな判断用として漁船比較計算モデル2例につき概説する。
7.1 4.9GT型多目的漁船のトランスウエブスペースを変えた場合の検討例
本船はFig.7-1に示すように、TrFSを600、620、700、840、900と5種類に使い分けて巧く設計されているが(Fr1より後部は除く)、これを一般的なデザインである機械的なTrFS=500の均等割りとした場合と比較して見る。
●対象船主要目
●部材配置の変動
本検討ではTrFS=500として比較するが、ロンジスペースは不変とする。TrFS=500の場合のプロフィルをFig.7-1下図に示す。
実船に較べTrFS=500では AP〜船首隔壁間でトランスリングが7枚増加する。ロンジスペースは不変であるから船底外板の板厚も変わらないが、ロンジとトランスのサイズは小さくなる。
上甲板関係はこの程度の船ではスペースには殆ど無関係である。
実船とTrFS=500の場合の中央横断面図をFig.7-2に示す。
●重量・コスト比較計算結果
構造配置図がないため、比較計算はFra〜船首隔壁間についてのみ行った。工数は溶接長ベースとし、これから現図、切断、運搬、取付等を含む全工数を推定することとした。溶接長計算では突合せ、隅肉とも同一条件、かつ部材両面各1層溶接とした。
以上によるTrFSを(600〜900)から500に変えた場合の計算結果は次の通り。
溶接長増加 +240m (主船体 +180m、上構 +60m)
重量減少 - 8kg (主船体 -34Kg、上構 +26Kg)
これに基づくパリテイ計算は次の通り。