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突合せ継手では、仕上げたことによる板厚の局部減少が5%前後を超えると、疲労強度に影響を及ぼしている30)。したがって、外板等の余盛を仕上げた場合に筋状に現れたときは、補修溶接する方が無難である。また、すみ肉溶接におけるアンダカットの応力集中率はかなり高く31)、現場作業ではアンダカットを見出した例はほとんどないが注意を要する。

(f)のブローホールは、その大きさ、数、位置などが強度に関係するので一概にいえないが、通常の溶接条件で発生するブローホールは、余盛がある場合には疲労き裂がその止端部から入るため、疲労強度にほとんど影響しないとみて差し支えない。これは、余盛の切欠効果が優先するからである。したがって、(g)の放射線透過試験(JIS Z 3105)による等級分類で、等級の劣るものが低い疲労強度を持つとは限らず、いずれもS-N曲線のばらつきの範囲にあって差が認められない。余盛を削除した場合には、その表面にブローホールが現れたり、又、ブローホールの量(気孔率)が断面積の2%を超えれば疲労寿命に影響する。外板等の余盛を仕上げた場合に現れたブローホールは、電気ドリルで板厚の途中まで穿孔して除去し、ティグ溶接で埋めればよい。したがって、放射線透過試験で見出された有害な欠陥とは、溶込み不良が主であると解釈するのが妥当である。

 

7.5 部材の取付け精度

 

船殻を建造する場合に注意を要するのは、部材の取付け精度であり、継手の目違いと取付ける際の隙間である。これについては、船舶用軽金属委員会が造船所の自主管理及び各種の立会検査における指針を与えるために作成したもの32),*7.41があり、Table7.36に突合せ継手、Table7.37にすみ肉溶接についてのそれぞれ取付け精度を示す33)。各Tableの「標準範囲」とは、満足し得る品質の製品を製作するために、その工程に与える精度の指標をいい、「許容限界」とは、標準範囲を超えたものでも、後工程で何ら修正することなく許容し得、かつ、最終品質を十分満足し得るものをいう。これらの許容限界については、次のことを考慮することが必要である。

 

Table7.36 突合せ継手の取付け精度33)

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