過大な余盛は、止端の半径が小さくなりがちで、応力集中を招きやすい。Fig.7.59は、曲げを受けるT継手について、余盛のフラソク角θをパラメータとして止端半径と板厚との比ρ/tが応力集中率αに及ぼす影響29)である。これから分かるように、応力集中率に最も影響するのは止端半径である。例えば、板厚t=5mmの場合にθ=140゚として応力集中率αを1.5程度に押さえるには、止端半径ρ=1.2mmは少なくとも必要であり、ρ=0.6mmではα≒2となる。したがって、過大な凸型の余盛は、応力集中によって疲労き裂を発生しやすいから止端半径に注意し、機関台座等に見受けられる場合にはグラインダで仕上げるのがよい。なお、Photo.7.9は、α≒1.45程度のすみ肉の断面写真23)である。
脚長は、静的強度の場合と同様に、疲労強度の面からみても板厚程度あれば十分で、それより大きくしても効果がない。Fig.7.60(a)は、5086-H112合金10mm板荷重伝達型十字継手(K形開先、未溶着部なし)で、脚長を8、10及び16mmと変えた場合の片振りS-N曲線の比較であり、同時に行われた他の未溶着部なしの十字継手の結果23)も含めると、厚さ10mmでは脚長8mm以上ならば疲労強度に影響を及ぼさない。
Fig.7.61(a)は、I形開先で脚長を10mmとして、溶込みを1及び3mmと変えた場合の同様なS-N曲線である。溶込み3mmの方が1mmより高い疲労強度(N=107)をもつが、これを止端応力(応力集中率と公称応力の積)α・σmaxで整理するとFig.7.61(b)のように一本のS-N曲線で表示される。