これは、前出のFig.5.13、同5.14及び同5.20などから類推できるように止端の曲率半径が最も応力集中に影響するが、それを基準化することが難しいことによる。余盛高さを低く、フランク角を大きくすれば、結果的に止端の曲率半径も大きくなって、応力集中率が低くなる、という考え方である。
突合せ継手の応力集中率αは、通常、引張りではα=1.3〜1.8程度21)であるから、曲げを受ける場合にはこれよりも低い値となる。ただし、これは実験室における標準的な形状のものなので、現状作業では、溶接姿勢の影響も考慮22)すると範囲は広がるものと考えられる。Photo.7.6は、継手の断面形状と応力集中率の例23)であり、矢印を付けた止端が最大の応力集中率を持っており、また、片面一層溶接では裏当て側の止端に注意しなければならないことが分かる。
以上のように、余盛の止端に応力集中を生じるから、極端な形状や不揃いな余盛形状の場合には、グラインダ仕上げすることが望ましい。しかし、グラインダ仕上げする場合には、「溶込み不良や融合不良*7.37がない」という前提条件が必要なことを認識して頂きたい。Table 7.34は、5083-O合金5.1〜12.7mm板ミグ突合せ継手の片振り疲労強度(N=5×106)であり24)、光弾性実験結果25)も含めて検討すると、溶込み不良の大きさが板厚の1/4以下で、断面積の7%以下ならば、余盛の有無にかかわらず疲労強度にさほど影響しないようである。
*7.37 多層溶接で、溶接境界面が互いに十分溶け合っていないことをいう。