3.3 結果の考察
継手設計は母材と板厚を等しくするものとはかぎらない。設計板厚に仕上げられた継手が母材と同等以上の外力に耐え得ることを要求される。
今回の試験片は母材スカーフ先端部分においてスカーフ積層時に樹脂を絞りすぎて板厚をかなり薄く仕上げてあり、本来の継手設計の性能を発揮していないため、再試験を必要とする。
試験の目的は1]母材と同一構成のスカーフ積層を行い、裏削り裏打積層を行った継手が、負担荷重に関して母材に対してどれだけの効率を有するかを知ること。2]MR単位のウエットオングリーン継手積層と連続積層との効率の差を知ることであった。
1] については継手部積層の絞りすぎのため、満足すべき結果が得られなかったが、仕上り板厚を用いた解析によれば、裏削り、裏打積層は有効であり、設計通りの板厚に仕上げればゲルコート側引張りの曲げ試験においてもほぼ満足な荷重が負担できるものと推察される。
2] については母材試験と同様、静的試験では相違が出なかった。疲労・衝撃等の動的外力に対しては母材の場合と同様に連続積層は性能が落るであろうと思われる。
以下今回の試験で知り得た結果について述べる。
1) 引張り試験結果を表3に示す。破壊強度(σt)は、A、Bタイプとも最小寸法(板厚)による断面積を用いた値で、17〜18kgf/mm2と安定した結果を得た。それに対して継手材は、強度保持率が77〜94%の値となり、スカーフ継手がスカーフ長によるが、かなり良い継手と思われる。
破壊様式は、スカーフ継手部が、はく離破壊を起こし、それとほぼ同時に他の層が壊されるパターンがほとんどであった。またひずみについても、最後までもったゲージは、荷重曲線と同様に破断までほぼ直線的に変化し継手部の接着性が良いことを示している。(破壊ひずみ値は、2.7%)
2) 4点曲げ試験は、S、A、Bタイプとも表、裏曲げの2種類の試験を行った、結果を表4、5に示す。