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4-2 造船・舶用工業技術情報支援センター構想の実現

 

4-2-1 造船・舶用工業技術情報支援センターの目的

 

第2章で整理したとおり、わが国の中小造船業及び舶用工業は、全国的に見ても人材の不足が深刻である。その要因として以下の項目が考えられる。

 

1]ほぼ特定の事業に専業化しており需要の変化を吸収するだけの多角化がなされていない。

2]厳しい経営環境からほとんどの業務を外注化しており、即戦力となる人材を使って能力ぎりぎりの業務を強いられている。

 

このため、今後経営を維持するために必要となる新規分野への進出や業務改善、特徴のある技術力を生かした競争力の強化といったことがほとんど期待できず、徒に自分の首を絞めるような中小企業同士の厳しい価格競争に陥っている状況にある。また、それゆえにこれまでに培われてきた技術を伝承するだけの余裕も無くなっており、企業としての技術的体力も失いつつある状況である。

したがって、今後中小企業の維持・発展を図るためには、特に人的な活力を補い、技術の伝承と人材の育成に資する支援策を具現化するインフラの整備が緊急に必要となっている。

現在の社会情勢における「規制緩和」、「需給調整の廃止」、「自己責任」の原則から、行政の恣意的関与は期待できないが、関東地区及び東京湾において船舶輸送は大きな社会的使命を担っており、造船・舶用工業は欠くことのできない業界であることから、中小企業の支援という観点からも、行政サイドが何らかの支援策を講ずる必要があると考えられる。

このような状況を踏まえ、関東運輸局船舶部が関連業界や有識者などの関係者にアンケートを行って意見を集約した結果、関連業界の情報発信や人的交流を目的とした造船・舶用工業技術情報支援センター(以下、センターという)を設置し、中小企業が優れた実績と技術力を有する技能工や有識者、経営指導者などとの交流を図るための基盤として整備し、人材不足という深刻化する問題の解決が図られるよう期待されていることが明らかになった。

そこで本節では、上記の機能を有したセンターをインターネット上に構築する事業について検討を行った。

 

4-2-2 センターの概要

 

センターは、まず、関東地区の大きな特徴である大都市環境、大手企業の本社中枢機能の集中を積極的に利用するシステムとすることが望ましい。

つまり、関東地区に集中する大学、研究所、大手造船企業、大手異業種企業などの豊富な人材、特に定年後のOBの方々を中心として、これらの頭脳と技術を活用することで、中小企業の慢性的な人材不足を解消するとともに、更に企業経営に対して戦略的に活用しようとするものである。図4-2-1にセンターの概念を示す。

特に、ここ数年インターネットが急速に普及してきており、安価に情報交流を図るための手段として優れていることから、センターをホームページ上に構築して、中小造船・舶用工業の事業者だけではなく、広く情報及び技術の交流が図ることのできるシステムとして提案する。

 

 

 

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