また、70%の医師が薬剤師による情報提供の必要性を認めながらも、今回のアンケート集計結果では半数の医師が薬剤師による情報提供に不安を感じていた。
さらに、患者から薬剤師に質問があった場合の回答の手順については52%の医師が回答について薬剤師に一任する、と答えていた。しかし、92%の医師が患者から質問があった事、およびその回答内容を通知して欲しいと回答しており、患者がどの様な疑問を持っているのか、また薬剤師の回答内容について疑問あるいは興味を持っていると思われる。
実際に患者から自治医科大学病院薬剤部に寄せられた質問は長期にわたって服用している薬についての質問(いつまで服用せなばならないのか、副作用は心配無いのか)が最も多かったが、この種の疑問は処方している医師に質問を行えば、明快な回答が得られるものと思われる。にもかかわらず、この様な質問が最も多い背景には「医師には聞きにくい、言い出しにくい」ことが考えられる。
この様な現象が生じた背景には、過去において患者に自覚される事が無かった疑問が今回の試行で具体化した、また、言い出しにくかった疑問を質問するきっかけになったとも考えられる。また、患者にとっては医師よりも薬剤師の方が質問を気軽に聞ける存在である、という可能性も考えられる。しかし、へき地在住の患者側の問題点として一般的に自分の病気の治療方針について積極的に説明を求めない事や、治療についての選択権が自分に有ることを強く自覚・主張していないことが推測される。
患者からの質問に対し薬剤師が回答する方法については、ほとんどの患者が郵送を希望したが、病院名の印刷された封筒の使用を拒否した患者もおり、回答方法についてはプライバシーへの配慮も重要であると考えられる。また、Eメールでの回答を希望した患者もあり、へき地在住の患者にあっても、多角的なメディアの利用を配慮しておかねばならないと考える。
今回の郵送による「お薬相談室」と並行して、数カ所のへき地診療所で「出張お薬相談室」を実施した。その際、事前のPRを積極的に行った効果も否めないが、多くの場合、事前の予想を上回る患者が集まった。しかも、現地のへき地診療所以外の医療施設を受診している患者も多く訪れた。患者に対して積極的に働きかける程、疑問を解決しようとするエネルギーは比例して大きくなると思われる。
今回の試行を実施した結果、へき地在住の患者においても薬の相談相手として薬剤師の存在は重要であると思われた。しかし、患者にとっては漠然と薬の質問票を示されても疑問が具体化されにくいとも感じられた。それを解決するためには患者が疑問をはっきりと自覚するための工夫も重要であると考えられる。