2.6 試験結果の所見
航空機内の電磁波環境を測定するため、ポータブルスペクトラムアナライザ、広帯域アンテナ及びパーソナルコンピュータ等からなる電磁波環境測定装置を試作した。この装置を用いて、平成11年11月から平成12年1月の間に羽田-関西及び伊丹空港間で10往復20回にわたり日本航空、日本エアシステム及び全日本空輸のボーイング777型機内の電磁波環境を実測し、航空機運航に際して使用されるVHFからSバンド(100MHz〜2500MHz)までの広い周波数帯にわたり客室内で受信される電波に関するデータを収集することができた。また、航空機の飛行経路や飛行高度に関する情報も得られた。
得られたデータの主な特徴をまとめると次のようになる。
(1) 測定時間(航空機の飛行位置)により観測信号レベルが大きく変化する周波数帯(例1015-1315MHz帯)や変化の少ない周波数帯(例1862-2662MHz帯)がある。
(2) 平均的なピーク値に比べ30dB以上強い電波が受信される場合がある。
(3) 往復の測定で信号レベルや観測時間によるレベル変動の傾向が大きく異なる周波数帯(例795-995MHz帯)や変化の少ない周波数帯(例122.5-147.5MHz帯)がある。
(4) 信号レベルが航空機の飛行高度に反比例する傾向を示す周波数帯(例795-995MHz帯)がある。
(5) 今回試験した羽田と関空又は伊丹間では、飛行経路は下り、上り便とも測定日にかかわらずほぼ決まっているが飛行高度は測定日により比較的異なっている。
今回のデータは、定期運行中のボーイング777型機で測定された世界初のものであり、航空機搭載の通信・航法等の電子機器への電磁干渉障害対策を考える上で極めて重要なデータである。今後、このデータをもとに、運航のため航空機から発射された電波や地上からの電波及び客室内から放射されたと予想される電波等の分類を行う方法を研究する。この分類が行えると、航空機内で使用する携帯電子機器からの電磁波のうち、航空機搭載の通信・航法等の電子機器に影響を与える恐れがある成分を検出するEMI検出器の検知周波数、検知電波強度等この装置の設計、製作に不可欠な情報が得られると期待できる。したがって、今回の調査結果はEMI検出器の重要な仕様を定めるのに活用できる貴重なものであった。
3 国内外のEMI関連動向の調査
国内外のEMI関連動向の調査としては、国内航空会社から運輸省航空局に報告された事例について航空局委員より紹介された。これを表3-1 1/2及び表3-1 2/2に示す。