日本財団 図書館


パルス化方式

 

受信機アンテナに大電力の信号を供給することができるという軍用擬似衛星(MPL: Military Pseudolite)の最大の長所の1つは最大の短所の1つでもある。航法信号が強められることにより耐妨害性が増すことは明白である。しかし、地上擬似衛星の距離が近いことにより、GPSアンテナにおける受信電力が擬似衛星との距離に応じて大きく変化するという環境を作り出す。近い距離にあるPLは遠い距離にあるPLを打ち負かす傾向が生じる。すなわち、近い距離にあるPLは実際には干渉源として作用し、より弱い信号の利用を妨げることがある。この「遠近」問題はどのような擬似衛星システムであっても性能上の重要な問題であるため実現可能な解決策を開発して実証しなければならない。遠近問題を軽減するための信号パルス化の有効性を評価する試験が実施された。使用されている何千台もの受信機を改修することの経済的現実性を考慮して、ソフトウェアのみの改修を行った量産PLGR受信機を用いるという評価の指針を設定して実行した。

 

遠近問題に対処するため、擬似衛星システムは各種のパルス化手法を用いてRF信号を高速でON/OFFしている。実証では3種類のパルス化手法を用いた。2kHzでのパルス化、50Hzオフセットの5kHz(すなわち、4.90kHz、4.95kHz、5.05kHz、5.10kHzなど)、及び50Hz低速シーケンシャル・パルス化(特許出願中)である。それぞれのパルス化波形はデューティ・サイクル10%である。

 

50Hz低速シーケンシャル・パルス化は、遠近問題に対して最も効果がある。これは、このパルス波形ではパルス・ゲーティングを組み込むことができるためである。パルス・ゲーティングは、信号がオンであるときのみ受信機が信号の積分を行う信号処理手法である。10%のパルス・デューティ・サイクル(PDC: Pulse Duty Cycle)の場合、これにより受信機のS/N比を10dB向上させる。パルスがシーケンシャルであるために、PL信号が一種の時間マルチプレキシングであり、一度に1つのPLのみを「聴く」ため、あるPLが他のPLに与える干渉を減らす。この単純でエレガントな解決法では、パルス化構造を最大限に活用するようにパルス・ゲーティングを組み込むために受信機の処理を追加する必要がある。必要なソフトウェア改修については、この試験の対象外である。しかし、収集されたデータにより、低速シーケンシャル・パルス化の実現可能性及び性能に関する貴重な情報が得られ、満足すべき結果であった。

 

高速パルス化信号の主な利点は、受信機に対するインパクトが最小であることである。高速パルス化では受信機に対して信号が連続して現われるため、本質的にソフトウェア変更を必要としない。主な欠点はパルス・ゲーティングを行うことができないためPDCの2乗でS/N比が劣化することである。50Hzオフセットの5kHzは2kHz及び固定の5kHzより優れている。これはC/Aコードのエポックのすべてのチップが20msの内に少なくとも1回放送されるためである。これにより信号がオンであるときにチップの一部しか発生しない固定の5kHzパルスの場合よりC/A相互相関特性が大きく改善される。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION