4.4.6 多目的放送型データリンク(MITRE)
米国MITRE社CAASDにより開発された多目的放送型データリンクは、UAT(Universal Access Transceiver)およびARP(Airborne Research Prototype)からなる機上装置とUATおよびGBS(Ground Broadcast Server)からなる地上システムにより実現されるブロードキャスト指向のデータリンクサービスである。多目的放送型データリンクにおいて提供されるサービスは、ADS-B(基本的な航空機飛行状態データおよび補足データの放送)、TIS-B(トラフィック情報の放送)、FIS-B(気象情報および航空情報の放送)、およびDGPS補正情報提供である。
ここで開発されたUATは、モードSスキッタ、VDLモード4と並ぶADS-Bを実現するための第3の通信方式として確立されたものであり、米国を中心とした製造者に技術移転が行われ、すでに製品化も行われている。
(1)提供サービスに関する評価
本システムの送受信機であるUATは1秒あたり1回の放送を行うため、リアルタイム性の要求されるサービスへの適用が可能であるが、すべての情報提供は放送型データリンクにより実現されるため、送達確認を行うことができず、管制通信に適用することは不可能である。言い換えると、多目的データリンクは情報提供に特化したサービスを目指したものであるといえる。
したがって、多目的放送型データリンクの「提供サービス」に関する評価レベルはBとする。
(2)適用空域に関する評価
多目的放送型データリンクにより提供されるサービスのうち、TIS-B、FIS-B、およびDGPS補正情報提供については、地上サイトのカバレージ内においてのみ提供可能であるが、ADS-Bについては適用空域に関して制限を受けることはなく、リアルタイム性の問題も生じない。また、ターミナル空域ではTIS-Bとの二重の情報提供の実現が可能となるため、信頼性の確保が可能となる。以上より、多目的放送型データリンクの「適用空域」に関する評価レベルは以下の通りとする。
・トラフィック情報提供については評価レベルCとする。
・トラフィック情報提供以外のサービスについては評価レベルAとする。
(3)オペレーション負荷
多目的放送型データリンクは、周辺のトラフィックおよび気象情報を周期的に送信する。イベント駆動的な機能は有していないが、情報送信時間間隔が極めて短いことから、そのような機能は不要であるといえる。なお、GBSは周辺の状況に関わらず放送によりデータを送信するため、システムによる状況判断はなされない。したがって、多目的データリンクの「オペレーション負荷」に関する評価レベルはCとする。