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地上側からのメッセージ送信については、機上側にメッセージが到達しない場合、何らかのエラーメッセージが返信される。したがって、エラーメッセージが返信されない場合、地上オペレータは充分な時間経過後には確実に機上装置がメッセージを受信していると判断して良い。しかしながら、送信した情報をパイロットが確認したかどうかを確かめることはできないことから、ヒアリングにおいて得られた意見はオペレータ間の送受信確認ができないところから挙げられたものであるとも考えられる。つまり、ヒアリングにおいて得られた意見は、音声通信でいうエンド−エンドの送達確認はオペレータを含めた送達確認を指すが、データ通信におけるプロトコル上のエンド−エンド送達確認は端末間の送達確認に過ぎないことを再認識する必要があることを示唆するものであるといえる。

ヒアリングにおいては地上側からの送信メッセージの到達確認について、RGSからNO ACKが返信されたにも関わらず、実際には機上側で正常にメッセージを受信しているという現象についても指摘されている。この現象は地上オペレータにとっては紛らわしいものではあるものの、空地通信においてはやむを得ない部分がある。この不整合は、機上側から送信されるACKに対しRGSからEOT(End Of Text)を送信することとし、機上においてEOTが受信できない場合には機上側で受信したメッセージを破棄するというプロトコルを採用することにより解消されるが、情報提供の位置付けでのアップリンクに対してこの処理を採用することによるメリットは小さい。

機上側が送信メッセージに対しRGSからのACKを受信したにも関わらず、地上評価装置にメッセージが到達していないというケースについては、パイロットにはメッセージ不達が認識されないものの、アビコムジャパン側で状況が把握され地上評価装置オペレータに伝達されることとなるため、地上・機上ともに認識することなくメッセージの喪失が起こることはない。

なお、ダウンリンクメッセージについても、ヒアリングにおいて得られた意見が、機上・地上の運用者間での送達確認の必要性の示唆を含むものであることを考慮に入れる必要がある。

 

4.3.6 通信エリア

通信エリアに関しては、11月16日午前のフライトにおいてVHF通信カバレージ外と考えられる養老山地で通信が不可となることを検証している。ヒアリングにおいては、衛星の利用によるVHFカバレージ外での出発・到着通報の実現を期待する意見が挙げられており、山間部等における出発・到着通報の実現に対するニーズが高いことがうかがえる。

 

4.3.7 放送型データリンクの必要性

ヒアリングにおいて、VHF−ACARSを現状の音声通信と比較した場合の短所として、放送による情報提供ができない点が指摘されている。実際に気象情報やトラフィック情報については、航空機ごとに必要とする情報が異なっておらず、地上サイトからの放送型データリンクにより情報提供を行った方が地上側の負荷および通信負荷の面から適しているケースも少なくない。そのようなケースへの放送型データリンクの適用についても検討を行っていく必要がある。

 

 

 

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