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4.3 通信・航法性能と運用者ヒアリング結果との因果関係

 

4.3.1 伝送遅延時間

VHF-ACARSを利用して実施した飛行評価試験において計測された伝送遅延時間は、全アップリンクメッセージ平均で20秒強、全アップリンクメッセージ中最大のもので3分強程度であった。1ブロックのアップリンクメッセージに限った場合、平均伝送遅延時間が約15秒、最大でも約2分の伝送遅延時間が観測されている(3章参照)。

ヒアリングにおいては、上記の伝送遅延に関する問題を指摘する意見は多くは見られず、情報提供の位置付けでの利用であれば有効であるという意見が大半を占めた。つまり多くの被験者は、あくまでも試用システムの取り扱うコンテンツを情報提供の位置付けで授受する場合には、VHF-ACARSを利用した通信における伝送遅延は問題にならないと感じているといえる。しかしながらヒアリングにおいてはさらに、緊急通報や安全確保を目的としたトラフィック情報提供に対する伝送遅延短縮の必要性を指摘する意見も挙げられており、地上支援システムに要求されるサービスレベルによっては、さらなる伝送遅延の短縮が必要となるといえる。

 

4.3.2 メッセージ到達率

VHF-ACARSを利用して実施した飛行評価試験において計測されたメッセージ到達率は約94%であった。この値は、わが国において大型定期便に対するVHF-ACARS通信に関して統計的に得られている値とほぼ等しく、情報提供コンテンツを取り扱う通信として特に問題となる数値であるとは考えられない。しかしながらヒアリングにおいては、飛行評価試験において利用したVHF-ACARSによる通信に対するメッセージ到達の確実性/信頼性を問題視する意見が多く挙げられている。これは、アップリンクしたメッセージを実際には機上で受信されているにもかかわらず、機上装置から返信されるACKメッセージがRGSに到達しなかったため、地上評価装置にNOACKメッセージが返信されるというケース(図4-10参照)が、全メッセージ到達ケースの約16%を占めていたことに起因するものと考えられる。本飛行評価試験におけるアップリンクメッセージ到達率が大型定期便に対する統計データとほぼ等しいという結果を考慮すると、機上からの低いACK到達率は小型機運航特有の環境条件に起因するものではなく、機上側ACARS通信機固有の問題である可能性が高い。

情報提供に限ったサービスにおいても、メッセージ到達の確実性/信頼性は要求度の高い項目であることは、本ヒアリングにおいても指摘されている。メッセージ到達率に関する要件については、4.3.5項に示すメッセージ送達確認に関する要件とともに検討する必要がある。

 

4.3.3 メッセージ順序性

前章に示されるように、飛行評価試験においては3通のアップリンクメッセージに対して追い越しの現象が確認されている。追い越しが発生したメッセージは全てトラフィック情報で、追い越し発生時の情報提供周期は30秒に設定されていた。

 

 

 

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