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1. はじめに

 

1.1 研究の背景

 

小型機運航に対する地上支援として、現在はVHF音声通信による情報提供、および位置報告に基づく運航監視などが行われている。しかし低高度および山間部では電波のブラインドゾーンとなること、また音声通信の品質劣化に起因する交信ミスの発生など情報提供、運航監視とも万全とはいえない状況にある。

人工衛星とデータリンクの利用を軸とした次世代の航空保安システムでは、ブラインドの問題が解消し、正確かつ高品質な情報提供・運航監視が可能となるため、小型機の柔軟で効率の良い安全な運航が可能となる。従って、次世代システムに対応した機上装置および地上支援体制の整備が求められる。

これら小型機運航を取り巻く環境の変化を受けて、航空振興財団は運輸省航空局の要請に基づき「小型機運航に対する地上支援システムのあり方調査・研究委員会」を設置し、平成9年度から調査・研究を開始した。

 

1.2 研究の目的

 

前述の状況を鑑み、本研究では、小型機運航に対する次世代の地上支援システムに必要となる機能要件を洗い出すため、試用システムを設計・構築するとともに、評価試験を通してその有効性を検証する。

最終年度にあたる本年度は、岐阜各務原において飛行評価試験を実施し、その結果を評価・分析して次世代の地上支援システムに関する方向性を検討した。なお昨年度まで検討・実施した作業を以下に示す。

 

(1)飛行評価試験で利用する通信インフラ(ネットワーク)

国内で利用可能な通信インフラを検討した結果、現状での技術的制約、費用的制約から、VHFデータリンク(ACARS)を採用した。

 

(2)飛行評価試験で利用する実験装置(ハード)

低コストで構築できる小型機運航者端末という位置付けで地上側装置は汎用PCをベースに開発し、機上側装置は技術面、費用面の制約から既製のACARS通信機(CNS-12)とGPSマップディスプレイ(DMS-80)を改修して使用した。

 

(3)評価対象となる試作アプリケーション(ソフト)

評価すべきサービス(アプリケーション)候補について国内外の事例をもとに検討した結果、運航支援サービス候補として「気象情報提供」「トラフィック情報提供」、運航管理(監視)サービスとして「位置通報」「出発(到着)時刻通報」の計4つのデータリンクサービスを試作し評価を行った。

 

(4)飛行評価試験で利用する情報源(コンテンツ)

評価試験で使用するコンテンツとして、気象情報提供は日本気象協会からオンラインで入手したレーダー画像情報とMETER情報(テキスト)を使用した。トラフィック情報提供はレーダー等の外部データソースとの接続が困難であったことから、試験装置内で仮想的に発生させた擬似データを使用した。位置通報および出発(到着)時刻通報は機体に搭載したGPS時刻および位置を使用した。

 

 

 

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