さらに、この材質はJIS G 3115に規定される圧力容器用鋼板であり従来法で例示されていたSS-41一般構造用圧延鋼材とは流通経路が全然異なる事が判明した。又、加工業者からも10 mm近い厚さのこの材料を40 mmφで打ち出すのは困難であると指摘され、ガスカット切断を行う事とした。尚、ジェット水流によるカットも提案されたが、諸事情から今回は割愛した。
また、ガスカットの素材表面に与える熱的影響を排除するため、カット後の試験片は充分に研磨による減厚処理を行った。
3.2 アルミニウム試験片による試験方法の検討(写-4〜8参照)
3.2.1 アルミニウム試験片における錆除去方法の問題点
国連勧告例示材質相当品が早期に入手できたアルミニウムについて、棒状品を納品してもらいアルカリ性物質に対する腐食性試験を検討した。
発錆の状態および鋼との違いを検討したが、試験物質により錆の出方に非常に差異があり、この差異が錆の落とし方の違いとなり、誤差として質量減少量に上積みされ、最終結果に多大な差異を与えた。この問題はASTMにも記載されており、測定者個々の判断に基づく錆除去の程度によりアルミニウム試験片の質量減少量が大きく左右されたものと考えられる。
3.2.2 アルカリ性試験物質とアルミニウム試験片の事例
酸性物質は鋼材質に強く作用し、結果は鋼試験片の減少質量で決定されるが、アルカリ性物質は通常、アルミニウム材質に強く作用しアルミニウム試験片の減少質量により金属腐食性の試験結果が決定される。
以下にアルカリ性試験物質等、鋼より質量減少量の大きかったアルミ試験片の発錆状態の実例を述べる。尚、下記3物質は複雑な組成であるが、皮膚腐食性がないことが実試験で確認されている物質である。
1]テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド
:鋼 0.01mm/年、アルミニウム 11.8mm/年
写-4試験中写真、及び写-5〜6、試験後の写真にあるように上部蒸気腐食量、大であった。物理的錆落とし後の状態は写-7に示すように蜂の巣状であり、錆除去は困難を極めた。
2]2-クロロ、5-クロロメチルチアゾール+ジメチルカーボネート
:鋼 4.8mm/年、アルミニウム 9.8mm/年
写-8にあるように凸凹腐食であるが、錆は簡単に水、及びブラシで落ち金属光沢面が現れた。
3] アルキルベンゼンスルホン酸塩+リン酸塩+炭酸塩+メタノール
:鋼 0.10mm/年、アルミニウム 3.6mm/年
写-7左側にあるように、気相部分の腐食は少ないが液中部分は蜂の巣状錆となった。