計算に用いたプログラムの入力項目は、貨物の剪断強度(剪断抵抗係数並びに粘着力)及び見かけ密度、パイルの形状(スロープの幅並びに高さ及び平坦部の幅)、加速度条件である。加速度条件としては、静的な横傾斜を想定し、その角度を入力する。出力は臨界安全率及びこれに対応する滑り線(円弧の半径及び端点の位置)である。
ダムのような重要構造物については、この計算法を用いた場合、臨界安全率として完成時には1.5、建造時には1.2を確保することとしている。船舶の貨物運送においては、建造中の構造物に倣って、臨界安全率1.2を評価基準とする(6)。
4.3.2 貨物パイルの形状及び船体横傾斜
計算条件のうち加速度としては、BC Code(1)の荷繰り基準(第5節)等を参照して、30度の静的横傾斜を想定することとした。
貨物は可能な限り荷繰りされていると仮定し、パイルの形状としては、図4.3.1及び図1.2.1(B)に示すような形を想定した。このような荷繰りを行った場合、スロープの幅は、船の半幅からハッチの半幅を引いた値程度になることが想定される。
ニッケル鉱の運送には載貨重量二万トン級〜四万トン級のばら積み船が用いられることを考慮し、スロープの幅を決定するため、このクラスの船の幅及びハッチの幅について簡単に調査した結果を表4.3.1に示す。表において「貨物斜面幅」とあるのは、(船幅−ハッチ幅)/2で計算した値である。この結果に基づき、スロープの幅は7 m、貨物のパイル頂部の平坦部の幅は13 mを想定した。
貨物パイルのスロープに高さについては、過去の実船試験結果(5)及びニッケル製錬各社から提供していただいた資料に基づけば、3〜5 m程度を想定すべきであると考えられた。そのため、5 mとした。
4.3.3 荷崩れ数値解析結果
各試料について、解析された剪断強度、即ち、図4.2.1〜4.2.5のグラフの値を用いて、4.3.2節で述べた条件下において荷崩れの数値解析を行った。その際、貨物の見かけ密度は、一面剪断試験時の試料の密度(別紙5−表R.5.1.1参照)を勘案し、表4.3.2に示す値を用いた。荷崩れ数値解析の結果を図4.3.2〜4.3.6に示す。