9. 「ポピュラーとハイ」二極化の同一化
70年代は衣食におけるファーストフード化を促進させたが、ファッションの世界におけるネオ・ジャンボニズムともいうべき現象を世界にもたらした。70年に高田賢三(KENZO)はパリ・コレクションに参加、71年には山本寛斎がロンドンで、三宅一生はニューヨークでコレクションを見せ、好評を受ける。その後70年代を通して、コム・デ・ギャルソンの川久保玲や山本耀司、またモリ・ハナエなどの日本人デザイナーのつくり出すファッションは西欧のファッション界で注目され、「ジャパニーズ・ファッション」として欧米のファッションに多大な影響を与える。80年代に入ると、「ジャパニーズ・ファッション」は世界のファッションの中に定着することとなった。パリやニューヨークのブティック街に多の西欧ブランド店と並び、イッセイ・ミヤケ、KENZO、コム・デ・ギャルソンなどのブティックが出現している。
これをどうみるか。伝統的な日本食品のファーストフード店の回転寿司もアメリカやイギリスに進出、牛丼の吉野家もアメリカに90店舗を構えている。高級料理としての日本料理店も全世界に存在し、伝統的なかたちの寿司店も世界のどこにでもあるといってもよいくらいである。
こうした傾向を見ると、衣と食におけるグローバル化は多様な中心をもち、互いに補い合いながら進展していることがわかる。その背後には先述したさまざまな社会・経済・文化的な要因があるのである。
注(以上の研究報告は、いま進行中の研究の中間報告である)
1. 中村靖彦『コンビニ、ファミレス、回転寿司』文春新書、1998(この本には多くの示唆を受けた)
2. 1970年にはじまる今日の日本のファーストフード食品の発展に関しては、フジタ未来経営研究所関係者の方々、とくに参事の斎藤伸浩からご教示を受け、又参考資料の提供を受けた。「日本マクドナルド20年のあゆみ」他同氏の個人的な資料を参照できたことに感謝したい。又同研究所では「調査、対日直接投資と外資系企業の分析」「対内直接投資の促進に関する調査研究」、などの文献資料も教示された。同研究所に感謝したい。
3. ジョージ・リッツア(正岡憲司監訳)『マクドナルド化する社会』早稲田大学出版部、1999