(4) 出店地の選定
日本マクドナルドの商業戦略は、高級な顧客層と若者層とを同時に狙い、しかも両者がともに集合できる場としての繁華街・中心街を出店地に選定することであった。それは地方都市においても、駅前のデパートなどのある場所が慎重に選ばれ、富裕な顧客層と若い人たちが、新しい食文化としてのハンバーガーを「手づかみで頬張る」食事行為を広げていくことを目標にする。これは食品の違いもあるが、日本KFCがアメリカ的に名古屋郊外に出店することからはじめて、日本マクドナルドと比べると日本の消費者への浸透がはるかに出遅れたことと対照的である。新しいものは中心からという商法が、日本マクドナルドの場合、うまくいった。藤田商店では、立地条件を駅前の百貨店などに代表される顧客吸引力のある中心ポイントを「TG=トラフィック・ジェネレーター」とよんで最優先させた。藤田商店では富裕層と若者層を食い合わせる消費者戦略を「入る構造」とよび、立地選定のやり方を「TG理論」と呼んでいる。
(5) 新しいネーミング
藤田商店では、マクドナルド・ハンバーガーの販売を「飲食業」と言わずに「高速度食品製造販売業」とよび、従来の「古い」飲食業・食品製品業のラベルを貼られることを避けて、企業イメージをむしろ工業製品と同じにしようと考え、その食品一製品の品質管理を重視する方式をとった。これはファーストフード食品が本来有している製造過程のシンプルさのもつ利点を生かしてのイメージづくりであり、食品とサービスを一人一人の顧客に提供する形を示そうとした。
(6) 情報化戦略
藤田商店は広告宣伝と話題づくりを当然重視しているが、商品名をやたら連呼するようなCMづくりを避け、むしろ各種プロジェクトやイベントを継続的に積み重ねながら、「信頼性のある」イメージの浸透を目標としてきた。マクドナルド・ミュージカルやコンサート、オリンピックやワールドカップなどのスポーツ行事への協賛などから養護施設の訪問、交通安全教室、献血運動や地域の祭りへの協賛など多岐に亘る広告宣伝が行われている。