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はじめに

 

経済のグローバル化が進むなか各国間での国内諸制度の相違が顕在化し、国境を越える経済活動に関して規制の撤廃を求める声は高まっている。その一方では、一国の国内制度の不備・欠陥が他国に大きな影響を及ぼすようになっており、それは単に経済や金融の問題に止まるものではない。昨年、ヨーロッパでは単一通貨ユーロが誕生しており、EU域内の経済統合は、今後ますます進展していくものと考えられる。また、経済問題に関して国際的な協力関係やルールの構築と実効性の確保は重要な課題であり、アジア通貨危機においてはIMFが果たした役割に加え、地域機構としてのAPECやASEAN等の多元的国際枠組の果たす役割や、わが国の役割にも注目が集まることとなり、新たな枠組の設置も模索されている。

政治・安全保障の分野では民族問題などでますます複雑化する国際関係を背景に、国連の果たすべき平和維持機能と地域機構の役割という多元的国際枠組のあり方について深刻な問題が生じている。東ティモールの分離・独立に伴う混乱では、極端な治安の悪化について国際的な非難が高まるなか、国連安保理の決議を受けて近隣のオーストラリアやASEAN諸国を中心に多国籍軍が編成され治安の維持に当たることになったが、予断を許さない状況にある。また、ユーゴスラビア・コソボ自治州における民族問題に絡む深刻な人権侵害では、NATOが国連安全保障理事会の決議を経ずに軍事介入を行い、国際的な人権問題への対処について重要な問いかけを行うことになった。

本プロジェクトでは、このような動向を背景に、米国、EU、ロシア、中国、そしてわが国といった主要国・地域での動向を考察するために4回の講演会を行い、また、本プロジェクトの締めくくりとして、多元的な国際枠組の機能・意義を検討し21世紀に向けての役割を展望するために、東南アジア、特にインドネシアの問題を中心に公開シンポジウムを行ったものである。

本報告書では、各講演会の概要を紹介するとともに、公開シンポジウムの概要および模様を紹介している。なお、公開シンポジウムのパネリストは、榊原英資 慶応義塾大学教授(前大蔵省財務官)、白石隆 京都大学教授、千野境子 産経新聞社 論説委員、渡辺泰造 青山学院大学教授(前駐インドネシア大使)の4名であり、モデレーターは大河原良雄(財)世界平和研究所理事長が行った。

 

 

 

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