日本財団 図書館


NACCSを例に出しましたが、Sea−NACCSでは平成11年10月より従来の取扱範囲を拡大し、貨物の輸入・輸出に関係する様々な手続き(書類)が電子化されており、参加を表明した業者間(税関・船会社・船社代理店・銀行・保税蔵置場・CY・通関業者)でやり取りがなされています。ただ、システムへ参加していない業者さんからの情報が混在する現状では、これらの貿易関係者間でシステムに対する習熟度の差異もあり、コンセンサスが上手く取れていなかったり、業者さん同士の調整や作業毎の対応、例外処理などにより業務運用面や情報の管理面でご苦労があるようです。また、システムの簡略化も望まれているようです。

さて、船荷証券を含む貿易関係書類を電子化するメリットとしては、電子的なデリバリーにより物理的なデリバリーに要していた時間やコストの削減。再入力する必要が無いよう上流から下流への情報共有。実務現場で大きな負担となっているデータ不整合等のチェックをコンピュータ上で自動的に行う。などが考えられます。

貿易関係書類の電子化は手続きの煩雑性・取引金額の巨額さ・船荷証券は有価証券であり紙であることが必要不可欠といった法的な特性ゆえに世界的に見ても電子化が遅れていますが、技術的には暗号技術の発達等により問題は解決していくものと考えられます。

今後、貿易関係書類の電子化に当たっては、まず法的な問題とか、認証機関とか、登録機関といった法的、制度的な枠組みや通信基盤のガイドライン作りが必要です。

次に、実際に既存の貿易関係書類を取扱う業者さんの業務プロセスを踏まえた上で、電子化された情報がどのように配信されるべきなのか、また貿易関係書類の電子化を想定した時に既存の業務プロセスがどのように再構築されるべきなのかを意識した上で、前述したような作業現場での問題が起こらないよう、関係者間での研究やコンセンサスを図り、システムに反映していく必要があります。更に将来的には、先行する他の貿易EDIシステムとの接続や相互運用を確保するといった研究が必要です。

通産省でも平成9年12月から「EDENプロジェクト」を実施し、権利移転技術やシステムの検証を中心に架空データを用いた貿易手続き書類の電子化を試みています。

次に技術面である程度の確証が得られた段階で貿易関係者間のコンセンサス作りに取り組むため平成11年1月から3月まで「貿易金融EDI実施ガイドライン策定プロジェクト」が実施され、荷主・銀行・保険会社・運輸から企業が参加し、コンセンサス作りに関して討議がなされています。

現在では、国内外のシステムとの相互運用性・接続性を確保した実用化システムの構築を目的にした「貿易金融EDI共通基盤システム開発プロジェクト」が取り組まれています。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION