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4.1]かつて1990年に、万国海法会(CMI)が抽象的な電子式船荷証券の発行・流通・回収のメカニズム(換言すれば電子式船荷証券における関係者の権利義務関係の抽象的モデル)として制定したCMI Rules for Electronic Bills of Ladingや、2]昨年実用化された(稼動開始した)Bolero B/Lの場合、いずれも、この点の特段の規定を置いていません。

尤も、1]は、所持人としての権利の行使(含む権利の譲渡)の際必要となる「個人キー」の安全維持につき「所持人」に責任を負わせており(Art. 8.b.)、2]は、各参加者(含むその時点での「所持人」)は、自己の秘密鍵を用いて電子署名されたメッセージについては責任を持つべき旨規定しています(2.2.4.(1))。電子式船荷証券における、上記3.記載のような事態は、通常、当該「所持人」の「個人キー」ないし「秘密鍵」が盗まれることにより生じるで筈だとすれば、そのような場合には、むしろ前主を信頼して当該電子式船荷証券の譲渡を受けた現在の「所持人」を保護し、当該「個人キー」「秘密鍵」が盗まれたもとの「所持人」は権利を失う、と考えるほうが素直なように思われなくもありません。

なお、3]現在通産省の予算事業として進行中の国産の電子式船荷証券プロジェクト33であるいわゆるTEDIプロジェクト34の場合、その法的な枠組を規定するTEDI共通規約も作成途上ですので、まだ何とも言えません。

 

33 正確には貿易関係書類全体の電子化プロジェクト。

34 「貿易金融EDI共通基盤システム」開発プロジェクト及び「TEDI共通規約」作成プロジェクト。

 

 

 

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