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VIII. 鉄道車両内への自転車持ち込み提言

 

地球環境問題の解決に取り組む上では「地球規模で考え、足元から行動する」姿勢が重要とされている。地球温暖化などは人類全体の存続に関わるグローバルな問題だが、それを解決する最善の方法は我々一人ひとりが地球市民の自覚をもち、日常生活において環境保全につながる努力を地道に積み上げていくことだ。

その意味で鉄道車両内への自転車持ち込みは、足元からの地球環境保全を目指した活動として高く評価でき、これを実行することによって市民の環境への意識がますます向上すると期待できる。鉄道への自転車持ち込み政策は、欧米では従来から積極的に推進されており、今後、我が国でも本格的な取り組みを開始する必要があるだろう。

今回のモデル事業で行ったアンケート調査でも、多くの人が「今後も自転車持ち込みを利用したい」と回答し、とくに大都市の一般乗客の70%以上が「自転車持ち込みを利用したい」という希望を表明した(条件付き利用希望も含む)。このことは、地球環境問題に対する市民の関心の高まりを示すと同時に、鉄道に自転車を持ち込むことの便利さが多くの人に認識された結果ではないかと思われる。

今後、国内の鉄道事業者が自転車持ち込みを本格的に推進するためには、解決すべき難問が数多く存在している。しかし、困難だからといって問題解決を避けたり、先送りしていては物事は一歩も前へ進まない。自転車持ち込みを円滑に推進し、社会に定着させるための施策を各界各層で議論し、提案していくことが必要である。その上で、国、自治体、鉄道事業者、市民がそれぞれの果たすべき役割を明確にし、それを行動に移すことが求められる。

一方で、自転車持ち込みによって鉄道事業者や利用客が環境保全以外のメリットをも享受できるよう現実的な工夫をすることも重要である。事業者にとって自転車持ち込みが半ば義務的な負担になるならば、積極的に推進しようというモチベーションは働かない。一方、利用客にとっても、自転車持ち込みが何らかの付加価値につながらなければ、利用は長続きしないといえるだろう。自転車持ち込みによって、地球環境保全への貢献を目指すと同時に、鉄道利用の促進による経済効果の追及を図るべきと考えられる。

ここでは、乗客などへのアンケート調査、モデル事業の実施事業者や沿線自治体首長からの聞き取り、文献調査などを通じて得られた知見をもとに、今後、鉄道車両内への自転車持ち込みを推進するための提言をまとめた。

(1) 自転車持ち込みに関するPR活動の推進

モデル事業を通じて改めて強く認識されたのはPR活動の重要性である。鉄道への自転車持ち込みがどんなに意義のある事業であっても、それを知らなければ誰も利用しない。

 

 

 

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