2. 広義のエコ交通…社会システム・政策のレベル、および総合的な交通体系のレベル
2-1 広義のエコ交通の概念
産業等の諸活動、社会制度・習慣等や都市構造や都市政策等、個人レベルの努力では直接手が加えられない基盤としての社会システムや政策が交通を規定する基本条件として、変化することができれば環境への影響が大きい。また、それらの下位レベルにある交通レベルで考えても個々の交通手段にとどまらない交通全体に関わる部分、交通機関の運営など、部分的な改善で対応できない領域を「広義のエコ交通」として考える。
産業構造、ライフスタイル、社会制度・法律、習慣など社会の仕組みに関わるレベル、あるいは、都市規模・構造、土地利用・施設配置などの交通以前の都市形態・構造などに関わるレベル、さらには具体的な交通に関して総合交通体系、公共交通網・運営形態等が「広義のエコ交通」の領域である。これらは、総合性、組み合わせ等の概念がともない、主に車の交通量の総量減少を主目標として対応されている。
通信技術のシンポにより実際に人や物の移動なしに情報交換で交通量を軽減することも、社会として環境負荷の景善を目指す広義のエコ交通に関わる効果であることを認識しておきたい。テレワークやインターネットショッピング、データ通信など今後交通の分野にも大きな影響が生じてくる。
この広義のエコ交通の領域において、都市交通に関わる部分の問題解決策としては、主に交通需要管理(TDM)の視点から諸施策が提案されている。
現状で最も現実的な都市行政、交通施策で効果を求めるならば、都市交通の総合的な再構成を行い、歩行者・自転車交通の推進とともに公共交通中心の都市整備と公共交通の運営システムの構築といえる。
2-2 都市および交通レベルのエコ交通
議論としては、交通環境や社会的背景、価値観等へも考慮し、少し範囲を広げて都市政策の領域等都市レベルも視野には入れておきたい。都市レベルは都市政策全般に係わるため現実の対応として、比較的修正可能で有効な手だてを容易に実施できる事柄もある。
今回議論が及ばない事柄についてもエコ交通の概念を規定、普及していくためには今後も継続的な議論をしていく必要はある。
まず、都市レベル交通レベルでの課題と2つの段階に分けて考える。
1) 都市レベル(都市構造と都市交通体系)
移動距離の減少という視点が主となる。また同じ移動距離であっても、エネルギーや空間の浪費に注目して、自家用車の利用を短くするために効率的な土地利用、施設整備、交通体系を再構築することが主な目標となる。生活空間である都市構造とその中での移動に係わる交通体系、システムを総合的に再構成することでも相当の効果は期待できる。
1] 都市構造…コンパクトで効率的な土地利用の都市構造
移動距離を短くするためには、まずコンパクトな都市空間であることが最も有利であり、さらに職住近接で混在的な土地利用が必要となっている。
これは、車が一般化する以前の都市形成の基本であった。今では改めてサステナブル都市の基本的条件となっている。