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III. エコ交通の展開

 

I章では環境を考慮した交通に関連すると思われる事例、試みを領域別に整理して取り上げ、II章では、車を中心に据えて環境に配慮した交通の方向性を考えてきた。

これまで環境に配慮した交通といういい方をしてきたが、こうした概念の交通を仮にエコ交通として考えていきたい。ここでエコ交通の定義をする必要性はかならずしもないが、これまでの考察を通してエコ交通とはどういうものを指すのか、そのあり方は何かの概ねの概念を考えていきたい。また、交通の分野において環境に配慮するにとどまらず、豊かな都市生活や自然環境にも寄与する21世紀の生活を支えるエコ交通という視点を持って、エコ交通の普及にむけて考察していきたい。

 

1 エコ交通の概念整理

 

1-1 エコ交通を取り巻くパラダイムの転換

これまで経済活動、都市整備などは「利便性」、「経済性」、「安全性」等の評価軸で展開をしてきた。しかしながら、現在ではこうした視点に加えて「環境」が次第に重要となってきている。地球環境問題への懸念から、これまでの経済性等の概念と多少の軋轢があっても、持続可能な発展を目指して「環境」の優先度が高まっている。我々の諸社会活動全般に渡ってこれまでの考え方を修正するパラダイムの転換が迫られている。

交通の分野においてもこれらの流れに応じた新しい「環境」という価値観、評価基準をもって、交通を考えていく必要がある。さらには、経済活動優先のため、効率性や量的充足などを主としてきた視点から、利用者や市民という側にたって「快適性」や「生活の質」、さらには「文化」、「人と人との交流」などの指標も「環境」と近いこれからの価値観を有する事項と考え、視野に入れて考えていきたい。

なおここでエコ交通と関連する環境としては、以下の事項を考えている。

・資源・エネルギー ・大気汚染 ・地球温暖化ガス ・騒音 ・交通事故 ・ゴミ・廃棄物 ・文化財汚染 ・動植物生態 ・空間占有 ・渋滞 ・インフラ整備

 

以上の直接環境と関連することがらに加え、快適性、生活の質と関わる価値観として

・健康 ・文化 ・コミュニケーション ・景観

 

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