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5. 環境から見た交通の方向性…車を中心に

 

環境を考えるとき、交通における車の利用は大きな課題である。もっとも、交通分野以外にも我々の生活や産業構造などから見直さなければならない問題も多く、また交通においても車以外の交通機関による環境問題も少なくない。しかし、車が大きな要素であることにかわりないのは前に示したとおりである。

少なくとも車依存社会が抱えている数々の問題は、車に関わる部分を見直し、改善することで軽減することは明らかである。地球環境問題という大きな課題と異なるが、20世紀のオートモビルの時代に我々の望む生活を実現するため生活環境、都市空間を車にあわせて作りだし、改変してきた都市の問題は車との関わりの中で生まれてきたことは間違いない。この部分の修正は次の時代を迎えるときの大きなテーマとなっている。

しかしながら、車の利便性を全面的に否定するのは現実的でもなく、生活の質を高めるのもではないだろう。これまで車によってもたらされたモビリティのレベル、利便性や快適性、自由度などを大きく損なうことなく、その高いレベルを維持しつつ都市や交通環境を整えていくことが前提になる必要がある。そのためには、都市構造の修正、改造も必要となるだろうし、都市交通全体がマルチモーダル化していく努力が必要なことは様々な事例からも理解できる。

特に公共交通の推進が重要なテーマではあるが、この章では、個人所有の車の問題から、車の利用方法、車から他の交通手段への転換、あるいは、車そのものの特質を中心に考えてきた。

最後の車そのものの機械的性能の改良進化や利用に関わる仕様等については、省エネルギー化や低公害型エネルギーの使用、あるいは、小型・軽量化などによる新しい次世代の車についてその利用を推進していくことは、利用者や社会の枠組みの視点からも関わることではあるが、直接的には車の生産や極めて技術的な問題と本研究では位置づけた。こうした、環境によりやさしい新しい車の利用・活用を積極的に推進していく必要は大いにある。従って、ここでは、車の新しい使い方と車にかわる交通手段という2点を中心に考えてきた。

車の利用については、個人の車と公共交通の間に位置する様々な中間モードの交通手段が考えられる中で車の共同利用に注目し、カーシェアリング、公共レンタカー、タクシーなどを上げ、公共レンタカーについては日本でもこのカテゴリーに近いシステムが別途社会実験として進められているので、カーシェアリングに少し焦点をあてて検討し、新しい車の使い方として今後普及が望まれるものと位置づけた。

一方、車から転換する可能性の高い交通手段としては、環境を考えるとき短距離移動手段としての自転車の可能性に期待した。自転車道路網や自転車駐車スペースの整備が重要である一方、利用方法として自転車の共同利用であるレンタサイクルの普及も今後力を入れていく必要がある。

 

 

 

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