はじめに
本報告書は、「新海上交通システム」についての調査研究結果をとりまとめたものである。
地球温暖化対策として、CO2排出量の削減等の社会的要請に応えるために、物流分野においては、効率的な大量輸送が可能な国内海上輸送サービスの利用を拡大する、いわゆるモーダルシフトの推進が急務である。
現在、海上交通システムが提供するサービス速度と、貨物が必要とする輸送速度との間にギャップが存在するため、高速貨物の物流について、海上輸送へのシフトが進展していない。高速貨物の物流について、海上輸送モードへのシフトを促進するための方策と、その費用対効果を検討することは、運輸交通分野における環境事業の将来ビジョンを作成する上でも重要な課題の一つである。
そこで、高速運送を必要とする貨物量を調査し、この貨物を対象として、トラック輸送に匹敵する速度と、これを上回る経済性を両立する新海上交通システムが実現できるか否かについて、既存の港湾インフラや規制等による制約にとらわれずに検討をした。さらに、当該海上交通システムの導入によるCO2削減効果についても検討を行った。
調査に当たっては、学識経験者、海運事業者、造船事業者、関係省庁の方々からなる「新海上交通システム調査研究委員会」を設け、指導、助言を得ながら推進した。本委員会の小山委員長をはじめ、各委員の方々、ならびに調査にご協力いただいた多くの皆様方に深く謝意を表す次第である。
本報告書が、関係者の方々をはじめ、地球環境問題の解決を推進する方々の一助となれば幸いである。
平成12年3月
交通エコロジー・モビリティ財団
会長 大庭 浩