3-3 交通モードごとのアクセシビリティ対策の状況
(1) この節の概要
ここでは主要な交通モードである鉄道、バス、個別交通についてカナダにおけるアクセシビリティ対策の経緯と現状を述べる。本文は『Making Transportation Accessible』(カナダ交通開発センター編)より、要約、引用したものである(図も)。同書は1998年に刊行され、カナダにおけるアクセシビリティ対策を包括的、かつ詳細に論じている。カナダにおける交通のアクセシビリティ対策を理解するために有用であることから、以下に要点を翻訳し整理した。
(2) 都市内鉄道
1]概況
カナダには、基本的な4タイプの都市鉄道システムがある。ライトレールトランジット(LRT)2種類、自動ガイドウエー(AGT)、フルサイズの地下鉄(ヘビーレールトランジット: HRT)である。いずれも設計・建設の年代が違うため、アクセシビリティヘの対応も異なっている。
ここでは、トロントの路面電車とLRTシステム、エドモントンとカルガリーで運行されているフルスケールのLRTシステム、バンクーバーで運行されているAGTシステム、モントリオール都市圏とトロント都市圏で運行されているHRTシステムについて述べる。現在のところ、バンクーバー地域のAGTシステムとカルガリーのLRTシステムはアクセシブルである。トロントのHRTシステムとエドモントンのLRTシステムは部分的にアクセシブルである。
2]都市内鉄道のアクセシビリティ
a. 都市内鉄道のアクセシビリティの課題
利用者の視点からは、円滑な移動のためには、トリップを構成する各要素がすべてアクセシブルでなければならない。鉄道で言えば、駅まで運行されているフィーダー(端末)バスやタクシー、駐車場、駅の入口、券売機、洗面所、キオスク、プラットホーム、車両などが含まれる。
1980年以前に設置されたシステムの多くは、駅の設計においてアクセシビリティが考慮されていなかった。そのため、交通事業者はアクセシビリティをいかに確保するかという課題に直面している。鉄道システムは資産の償却期間が長く、単純に取り壊して建て直すことは出来ないため、いくつかの駅では大規模改修による対応を余儀なくされている。
地下鉄へのアクセスの最大のバリアは、垂直方向の移動である。トロントでは改装や改修によって駅にエスカレーターとエレベーターを設置しているが、非常に費用がかかる。日本では、より低コストな解決策として、エスカレーターに、車いすを乗せるための平坦部を設ける方法が取り入れられている。