3-2 カナダの交通のアクセシビリティに関する政策および運用の仕組み
(1) この節の概要
この節では、カナダにおけるアクセシビリティに関する政策の概況を述べる。
中心的な役割を果たしている運輸省について、これまでの政策的な取り組みの経緯を(2)から(4)で示している。運輸省では、「最適な交通システム実現のための開発および政策、規則の策定、サービスの管理」を軸に交通のアクセシビリティの確保に取り組んでおり、ここ20年間に以下の主要な取り組みが行われている。まず、70年代初頭からの運輸省の外郭研究機関である交通開発センターの先進的な取り組み、続く1979年の「障害者の交通ニーズに関する諮問委員会」、1980年の「障害者に関する国会特別委員会」の設置が挙げられる。80年代は、1981年(国際障害者年)に報告書『Obstacles』がまとめられ、交通分野に関するいくつかの提起がなされた。1982年の「カナダ人権法」、同年の「権利および自由に関するカナダ憲章」により、人権法、平等権の観点からアクセシビリティ対策が進められている。1991年には「障害者の社会参加のための国家戦略5ヶ年計画」が発表され、雇用、住居、レクリエーション、コミュニケーション、および交通へのアクセスを向上させ、コミュニティヘの参加を支援するプログラムが展開されている。その他に、カナダ人権委員会、州レベル、地方自治体レベルの取り組み概要についても述べている。
(7)では、運輸省に関連する組織として交通開発センター(TDC)と交通事業監督局(CTA)について述べる。
TDCは、カナダ運輸省により設立された同省の外郭研究開発機関である。交通システムの安全性の確立、アクセシビリティの向上、環境の保護を目的として、交通の技術革新を進めている。研究ライブラリーおよび出版部門があり、情報およびコミュニケーション・サービスの提供も行う。50名のスタッフで100以上のプロジェクトを実行しており、これまでの経緯や現在の開発の成果等を述べる。
CTAは交通のアクセシビリティ推進のための規則を制定する役割や消費者と交通事業者間のアクセシビリティに関するトラブルを解決する交通裁判所としての役割等を持つ組織である。CTAの取り組みの重要な柱の一つがコード・オブ・プラクティスの策定と交通事業者への適用を図ることである。コード・オブ・プラクティスはアクセシブルな交通を提供する際、より具体的で統一的なガイドラインが必要という認識のもと、事業者が考慮すべき実施規則を定めた任意規定である。原案はCTAが作成し、運輸省が監修に加わり、利用者の代表や業界の代表が加わる諮問委員会を設置して策定されている。コード・オブ・プラクティスに基づいた、利用者と交通事業者間のトラブルの解決の仕組みについて述べる。
その他の組織として、カナダ・バス協会、カナダ都市公共交通協会、カナダ交通協会、カナダ航空輸送協会、カナダ・フェリー運航事業者協会、カナダ自動車協会のアクセシビリティに関する取り組み概況を述べている。