2-5 ワシントン
(1) この節の概要
首都ワシントンD.C.における公共交通事業のアクセシビリティ対策について述べる。交通事業者として都市間鉄道のアムトラックおよびワシントン首都圏交通公団(WMATA)について概況をまとめている。
アムトラックは、全米をネットワークする都市間鉄道である。本部はワシントンにある。都市間鉄道として、主要駅については「キーステーション」コンセプトによりアクセシブル化に取り組んでいる。新型車両はすべてアクセシブル化することになっている。また、プラットホームがある場合は、ブリッジプレートと言う渡板を使用して車いす等のアクセスを確保するほか、プラットホームがない場合は、ハンドリフトで対応するなどアクセシビリティ対策に取り組んでいる。車両に関しては、少なくとも1編成1車両のアクセシブル車両を連結する対応を進めている。Amtrak Accessというオフィスを設けて、障害を持つ人を始めとする利用者とのコミュニケーションにも様々なかたちで取り組んでいる。都市ごとの交通システムではなく、都市間鉄道システムにおいてはどのようなアクセシビリティ対策が取り組まれているのかを述べた。
1967年に議会が設立を認可したWMATAは、主として地下鉄(メトロ)、バス(メトロバス)を運営し、パラトランジットであるメトロアクセスは、民間の交通事業者に委託して運営している。70年代の開業ながら、一部の改良工事を施しただけで、ADAに対応しているアクセシブルな地下鉄、リフトの装備率が77%のバスなど、すぐれた公共交通を提供している実態を述べた。また、ADAオフィスを設置し、アクセシビリティ対策に取り組んでいる。
(2) ワシントンの都市情報
ワシントンD.C.はメリーランド州とバージニア州に囲まれ、人口は54万人、周辺の都市圏を合わせると700万人を超える(1996年)。ワシントンD.C.内は地下鉄網が張り巡らされ、隣接する州へも境界を越えて通勤鉄道やバスによるトリップが行われている。
(3) アムトラック(都市間鉄道)
1]設立経緯
アムトラック(Amtrak:正式名称National Railroad Passenger Corporation)は、これまで個別に運行されていた都市間鉄道を引き継ぐかたちで、1971年5月1日に、連邦政府により設立された。アムトラック株の大部分は、運輸省を経由し連邦政府により所有されている。8名からなる運営委員会が監督に当る。運営委員会メンバーのうち6名は、大統領が議会との協議により任命し、上院により承認されることになっている。