2-3 サンフランシスコ
(1) この節の概要
サンフランシスコでは公共交通のアクセシビリティ対策を整理した。交通事業者としてMUNI(San Francisco Municipal Railway)およびBART(湾岸高速鉄道:Bay Area Rapid Transit)のシステムにおけるアクセシビリティ対策をまとめた。
MUNIはケーブルカー、ライトレール、バス、トロリーバス等を運行している事業体である。ライトレールを中心にアクセシビリティ対策が進んでおり、旧型の車両においても、プラットホームの改善やハンドリフトにより車いす等の利用を可能にしている。また、定期開催されるアクセシビリティ諮問委員会(MAAC)を設置し、様々な意見を反映させながら、情報発信、視覚障害者への対応等のアクセシブル・サービス・プログラム(ASP)を実施している。
BARTは、現在5路線、153kmで運行しており、都心部では地下部を走行する。そのため駅へのアクセスに関しては、エレベーターの設置を始め様々な対策が取られている。高齢者・障害者向けのアクセシビリティ・サービスの利用案内冊子やインターネットによる情報提供を積極的に行っている。例えば、駅周辺の道路から駅へのアクセスし易い場所が判断できるエレベーター設置場所等の図面が提供されている。その他にも駅周辺の障害者優先駐車場の確保、駅構内の駅員直通電話の設置、エレベーター・コール・カードなどの対策が取られている。
その他のシステムとして、一般のタクシーとして運行を開始している、車いすで乗車可能なスロープ付のランプタクシーについて述べた。1994年にMUNIが試験的に導入を開始して以来、徐々に民間事業者での導入が増えている。こうした車両はADAのパラトランジットにも利用されている。
(2) サンフランシスコの都市情報
アメリカ西海岸の代表的都市サンフランシスコは、人口およそ64万人(1996年調べ)、周辺の都市圏を合わせると人口はおよそ700万人である。
半島地形で急峻な坂が多いところに市街地が密集している。市内の交通の便は、有名なケーブルカーをはじめ、地下鉄、ライトレール、バス、トロリーバス等の路線が整備され、アメリカの中でも公共交通の発達した都市の一つである。
(3) サンフランシスコの交通とアクセシビリティ対策
サンフランシスコでは交通事業者に対してヒアリングを行っていないため、都市内の公共交通の視察、既存調査およびインターネットによる情報収集をもとに現状について整理した。ここではサンフランシスコ交通局(以下MUNI: San Francisco Municipal Railway)および湾岸高速鉄道(以下BART: Bay Area Rapid Transit)の事業現況およびアクセシビリティ対策について述べた。