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2-2 アメリカの交通のアクセシビリティに関する政策および運用の仕組み

 

(1) この節の概要

 

ここではアメリカの交通のアクセシビリティに関する政策および推進の仕組みについて述べる。具体的には、政策レベルとして政府の取り組みについて述べ、その政策を推進する役割を担うNPO系の団体の活動状況を述べる。

政府レベルでは、交通のアクセシビリティ対策は連邦公共交通局が中心となってADAに対応した交通環境の整備に取り組んでいる。前半ではADAまでの交通のアクセシビリティに関する歴史的な重要事項の変遷を述べる。さらに、ここ数年の動きとして、運輸関連法であるTEA21(ティー21)の特徴を示す。TEA21では従前のISTEA(ISTEA)から引き継いだフレキシブルファンドという制度により、これまで道路に偏重していた予算を公共交通に振り向けることが可能になった。その額はまだ小さいが今後のフレキシブルファンドの活用によって、アクセシビリティ対策にもさらに予算を割くことができる可能性が出ている。また、交通モードごとのアクセシビリティ対策の整備率を整理した。

NPO系の組織に関しては、全国レベルの取り組みとして、全米コミュニティ・トランスポーテーション協会(CTAA)、障害者のための交通の刷新プログラムであるプロジェクト・アクション(Project ACTION)、地方レベルのNPO組織としてマサチューセッツ州のマルタ(マサチューセッツ地方公共交通事業者協会:MARTA)について述べる。

CTAAは、すべての人々のモビリティを向上させるための全国レベルの協会である。既存の公共交通にアクセスできない地域の高齢者・障害者もしくは困窮する人々のために、地域のコミュニティ・トランスポーテーションの立上げや改良を目的としている。会員である交通事業者からの会費、連邦補助、寄付で運営し、情報支援、技術支援、財政支援、各種プログラムの主催等の活動をコミュニティレベルの交通事業者に対して行い成果を挙げている実態が明らかになった。

プロジェクト・アクションは、政府から委託を受けた非営利組織が運営を行う時限的なプロジェクトである。議会が「身体障害者のための公共交通の刷新」を明確化したことにより活動を開始した。運輸省連邦公共交通局の予算を受けて、全国規模でADAの完全な実現を目指して交通とアクセシビリティのバリアを取り除くことに取り組んでいる。あらゆる地域、交通事業者を対象とし、トレーニング・プログラムの開発、技術支援、情報提供、調査・研究等を行っている実態が明らかになった。

マルタは、マサチューセッツ州の地方都市の交通事業体が加入する組織である。交通事業者を支援するためMArtap(Massachusetts Rural Transit Assistance Program)というプログラムにより活動している。公共交通が発達していない小都市の交通事業者を対象に、従業員の職務に関するトレーニングの実施、利用者教育、その他情報交換を通じてお互いの利便をはかることを目的としている。活動は州の補助で賄われており、交通事業者が補助を受けるための州との窓口としても機能している。こうした地方レベルでのNPO組織の役割を把握した。

 

 

 

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