本報告書の概要
この調査は「欧米主要国における高齢者・障害者の移動の円滑化に関する総合調査」の2年目の調査である。わが国の移動と交通を考えた場合、高齢者、障害者などの移動に制約のある人々への支援は次第に進んできているが、必ずしも十分な整備が行われているとは言い難い。そこで、欧米主要都市における、交通分野での高齢者・障害者の移動の円滑化に関する対策を調査し、わが国における移動支援のあり方を展望することとした。昨年(1998年度)はヨーロッパの先進事例として、フランス、ドイツの主要都市において現状の調査を行った。今年度は、北米(アメリカ、カナダ)の事例について現地調査等を行った。
1章では本調査の目的、調査対象、調査の方法を述べた。調査の対象は、中央政府、交通事業者、NPO、研究機関等である。
・アメリカの交通のアクセシビリティに関する政策
2章では、アメリカの交通のアクセシビリティについて述べた。政策レベルとして政府の取り組み、およびその政策を推進する役割を担うNPO系組織の活動状況を述べた。
政府レベルでは、連邦公共交通局が中心となり「運輸省のADA規則」を策定し、ADAに対応した交通環境の整備に取り組んでいる。法制度については、これまでのアクセシビリティ確保の長年の取り組みの経緯に加えて、近年の動きとして、運輸関連法である「21世紀に向けた交通平準化法(以下TEA21)」(ティー21:Transportation Equity Act for 21stCentury)の特徴を述べた。TEA21は従前の「陸上交通効率化法(以下ISTEA)」(アイスティー:Intermodal Surface Transportation Act)から引き継いだフレキシブルファンドという制度(図A)により、これまで道路に偏重していた予算の一定部分を公共交通に振り向けることが可能になった。これにより、アクセシビリティ対策にも予算を割くことができる可能性が出ていることを述べた。