4-4-2-3-4. 乗降に要する時間
一般に高齢者や障害者が旅客船に乗降する場合には、健常者に比べて時間を要するものと思われる。今回の調査結果ケースでも、車イスを使用している肢体障害者を人手でサポートする場合には、乗降に10分以上の時間を要するケースもあった。しかし、乗降に要する時間は、同じ車イスを使用している肢体障害者であっても、障害の程度には個人差があり、一定の時間をもって区分することは難しいと思われる。
一方、旅客船の停泊時間は、航路の主たる利用目的や時間帯、船舶の規模等によって大きく異なると思われる。例えば生活を目的とする航路で朝や夕方の通勤・通学時間帯では、乗降客の乗降が完了次第すぐに出航するといった運航がされており、乗降に要する時間は極めて短い。また、運航時間の速さを売り物にする高速船の場合にも乗降に要する時間は短いケースが多かった。今回の調査結果では、こうした乗降時間が短いケースでは船舶の側に自動昇降タラップを設置し、タラップ自体の段差解消を図ることにより、高齢者や障害者が短い時間で安全かつ円滑に乗降可能としているケースもみられた。また、長距離のフェリー等の航路では、乗降に要する時間は30分以上確保可能なケースもあり、こうしたケースでは、一般の乗客が乗降する前に高齢者や障害者に乗降してもらう等の措置をとっている例もあった。
乗降に要する時間については、高齢者や障害者の個人差があり何分程度であれば人手の対応が可能といった明確な区分を行うことができないため、今回の調査では検討対象とはしないこととした。