また、塩害の問題とは、海水のしぶき等にさらされることにより、海水に含まれる塩分の影響により金属部分が腐食しやすくなり通常の陸上施設に比べて耐久性が著しく劣るため、柵等の物理的強度が弱くなりやすい、施設の機械的機構部分、電気・電子部品等の劣化が早まり、装置寿命が短くなる等の問題である。
4-4-2-2. 海上交通施設構造上の問題点
4-4-2-2-1. 段差(いわゆるコーミング段差)
船舶には、船舶構造規則第39条で「コーミング」と呼ばれる水密機構を保つ設備が必要である。
コーミングの高さは、船舶の種類や設置場所の海面からの高さ等によって異なっているが、今回の調査では概ね100mm〜400mm程度である。設置箇所は、舷門付近やデッキからの船室出入り口等が主要な箇所である。
コーミングは、船舶の安全性を確保する上で必ず設置しなければいけない設備であるが、車いすを利用する肢体障害者にとっては、乗下船及び船内を移動する際の妨げになるばかりではなく、高齢者や車いす利用者以外の歩行困難者、視覚障害者等にとってもつまずいて転倒する等の危険があり、高齢者・身体障害者等が海上交通を利用する際に大きな障壁となる部分である。
4-4-2-2-2. 通路幅
運輸省「公共交通ターミナルにおける高齢者・障害者のための施設整備ガイドライン」(平成6年3月 策定)においては、車いす使用者が通行可能な最低限の通路幅は800mmとされている。一方で、船舶のスペースの制約上、小規模な船舶においては800mmの通路幅の確保が困難という問題がある。
4-4-2-2-3. 垂直移動
2階以上の位置から乗船する必要のある旅客船ターミナルや舷門と旅客室が異なる船舶、旅客室が複数の層にまたがる船舶においては、垂直移動が必要となり、車いす使用者や車いす以外の肢体不自由者、高齢者等にとってスムースな移動が困難という問題がある。