また、時を同じくして、2階のオモチャ屋のオーナーから、約7m2のフロアーを提供するので、好きなように使ってくれという申し入れがありました。「人間関係が希薄化したいま、自分の店も何か社会の役にたつことがしたい」という趣旨でした。
頭の中に「井戸端会議」という言葉がひらめきましたので、その申し出を受け、子育て中のお母さんたちの相談場所を設けることにしました。
コーナーがオープンする日、入り口には、かわいい看板がかけられていました。それには「メルヘンママ」と書かれ、可愛い花が散りばめてありました。
そこではさまざまな方々から、たくさんの相談をうけました。
しかし、バブルはみごとにパンク。2年目になると、そのメルヘンママのコーナーにも商品が並べられました。オーナは、米つきバッタみたいに、すみません、すみませんの連発。背に腹は代えられないという顔でした。
いま、その時に出会った人たちが、いろんなところで口コミをつづけてくれています。
いろいろ大変なこともありましたが、その大変だった分がそっくり口コミとなって園を支え、地域になくてはならない存在にまでなれたのだと思います。
地域の子育て支援とは、「子育てを支援しますのでご来園ください」と書いた看板を立てることで実現できるような代物ではありません。
地域への小さな心のサービスが、長い年月をかけて浸透し、信頼感を育み、「ちょっと立ち寄ってみたくなる園」「何もないけど立ち寄ってみたらホッとする園」といった有形無形のものが、その施設に雰囲気として漂っていることが大切だと思います。