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(10) 地域のオアシス愛の園

 

福岡県大野城市・のぞみ愛児園

園長 豊永せつ子

 

楠の赤ちゃん

いつの日にか、子どもたちがこの木陰のベンチに座り、仲間といっしょに本を読んだり、おしゃべりを楽しんでほしいな。

いつの日か、この木陰で、発明王にでもなったつもりの子どもたちが、泥と水の調合をくりかえし、何度も何度も失敗を重ねて、自分だけの力で、固くて艶やかな泥饅頭を作り、満足感や充実感を味わってほしいな。

そして、この木が大きくなった時、サルにも負けない早業で高い枝に登り、「いつか僕も大きくなって……」と、自分の「のぞみ」をふくらませて欲しい。

そんな願いをこめながら植えた背丈ほどの楠が、今では園庭の半分を覆うまでに枝葉を茂らせ、園の立派なシンボルになりました。

その楠の木陰は、子どもたちにとって格好の泥饅頭工場です。毎日のように泥をすくい取られて、根元はいつも穴ぼこだらけ。楠はいつも泣いています。

私は苦肉の策を講じ、幹のまわりを厚い板で覆い、円形の野外ステージにして、根の保護を考えました。

このステージ、なかなか便利で、毎週火曜日、地域のお母さん方に園庭を開放するさいには、格好の憩いの場ともなります。

小さくて、まだまだお座りだけの赤ちゃんは、このステージから他の子の遊びをもの珍しそうに見て、飽くことをしりません。

 

 

 

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