序文
家族の小規模化、核家族化、少子化の進行は、家庭内の子育てに関する知識の伝承や育児経験の機会を少なくしています。また、都市化の進展は、地域社会の子育てについての相互扶助機能を低下させています。
最近の若い親たちは、家庭内や近隣に育児に関する相談相手がなく、孤立化し、悩んでいる場合が少なくありません。
保育園には、長年にわたって蓄積された子育てに関する知識や経験があります。
地域における子育ての社会資源として、保育園は、その保育の専門機能を活用して、子育て支援を行うことができます。
新しい児童福祉法も、改訂された保育所保育指針も保育所が地域の子育て支援活動を推進することを期待しています。
50年前に児童福祉法が制定されて以来、保育園が担ってきた社会的役割は、「仕事と子育ての両立支援」です。共働き家庭が一般化している今日、この役割はますます重大なものになっており、今後も保育園に求められる役割の最大のものでしょう。
そして、近年になって顕在化してきたニーズが、「地域の一般家庭への子育て支援」です。今、保育園に与えられている課題は、在園している子どもたちの保育だけでなく、園児以外の子どもとその家庭への支援です。その支援の方法は、子育てサークルの育成・支援、保育園の開放、子育て相談、育児講座の実施等、実に様々です。
今回のこの実践講座には、多様な子育て支援の事例が数多く掲載されています。
本書は、日本財団の補助を得て出版されたものです。財団が上記のような「地域の子育て支援」の必要性をご理解くださり、本書発刊のために多大の補助をしてくださったことに対して、心から感謝いたします。
この実践講座が、多くの保育関係者に読まれ、地域の子育て支援活動の充実と向上にいささかなりともお役に立つことができれば幸いです。